物置に引きこもり(1)
小秋はぼうぜんとしたまま、実家の東北・仙台へと帰った。もはや、誰も帰って来ない家にいてもつらくなるだけである。
勤務先の幼稚園には親が入院したと言って、三週間ほど長めのお盆休みを取った。今までろくに休みも取らなかったので、たまりにたまった有休を思い切って使うことにした。
私のこれまでの人生は一体何だったんだろうか…と思わずにはいられなかった。子ども達は迷うことなく、母親について来てくれると信じていたのに…。よりによって、義理の姉・ゆりの所へ行くとは…。
もう、全てがどうでもよくなった。こんなことになるぐらいなら、結婚なんかせずにずっと独身でいればよかった。お腹を痛めて、二人も子どもを産まなければよかったとさえ思った。
そんなことを考えたら、また涙があふれてくる。実家に帰って来てから、ずっとかつての自分の部屋にこもりっきり…。今は半分、物置になっているような部屋で…。
ほこりにまみれながら、ひたすら泣いた。前にごはんを食べたのはいつ? ショックのあまり、体が全く食べ物を受け付けない…。もう、このまま死のうかな…。その時、突然、ドアが開いた。
「小秋、いつまで部屋にこもっているんだい? そりゃ、悲しくてつらいのは分かるけどさ…。全く食べないのは、体に毒だよ。いつまでもメソメソしていないで、これからどうするか、父さんと三人で話そう。あっ、そう言えば、勇務さんから息子がすみません…って電話があったよ。とりあえず、この場はこれで納めてくださいって、五十万振り込んだそうな…。詳しいことは梅子さんの四十九日の法要までに決着をつけようってさ。ここにおにぎりを置いておくから、ちょっとは食べなさいよ!」
母の真智は一方的に話して、おにぎりを置いて、足早に去っていった。一瞬だけ顔を歪めたのを小秋は見逃さなかった。
母に腫れ物扱いされて、また悲しくなった。もう、涙腺が完全にバカになっている。涙を止めようと思っても、止まらなくなっていた。真夏なのに、心も体も氷のように冷たい…。
かつてはどんなに厚い氷であっても、溶かせるぐらい心も体も熱くなった時もあったのに…。今、別れ話を進めている馬鹿な男と馬鹿みたいに愛について語り合った時があったのに…。夢でも見ていたのかもしれない…。
ただ、まぶただけが変に熱っぽいし、ほっぺは涙でベタベタしていて、とにかく気持ち悪い…。まぶたの熱が無くなった時、本当に命が尽きるのでは…と感じて、思わず悪寒がした。




