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親子二代の離婚  作者: あまやま 想
浮気の代償
30/70

不意打ちを食らった辰雄と小秋

 夕方、小秋は桜と冬彦の帰りを待ちながら、いつものように夕食を作っていた。いつものように仕事をすませた後、スーパーに寄って、夕食の食材を買ってから家に戻った。

 

 最近は夏休みでも、共働き夫婦のために長時間預かり保育をするようになっている。そのため、半分ぐらいの園児が普段と同じように幼稚園に登園する。ただ、休業中なのでひらがなのお勉強などはしない。ひたすら、朝から夕方まで遊ぶのである。それがかえってきつい。


 そこで、夏は疲れやすいからと言って、昼寝の時間を設けて、お互いに休む時間を作っている。子どもたちが眠くなるように昼寝の前には、テンポのゆったりとした童話を読む。三年寝太郎の話は寝付きがいいのでいつも読む。


 この時、小秋は桜と冬彦が既に家出したことを全く知らずにいた。夏休みが始まったばかりで、二人とも開放的になっているのだろう。だから、いつもよりもたくさん外で遊んでいるに違いないと、勝手に思い込んでいた。


 しかし、それにしても遅すぎる…。もうすぐ八時になろうとしている。いくら夏とは言え、さすがに外はもう真っ暗だ。いくら、夏休みと言っても、これでは先が思いやられる。


 二人が帰って来たら、厳しく注意しないといけないなと考えていた。その矢先、突然、携帯電話が鳴り出した。小秋は嫌な予感がした。二人が何か事件に巻き込まれたんじゃないか…とあらぬことを思った。携帯画面を見ると、電話は辰雄からだった。言い尽くせぬ不安が体中を巡る。


「大変だ! さっき、姉貴から電話があって、桜と冬彦が家出しそうになっていたから、二人が家出をする前に、福岡に連れて行くことにした。そして、二人は既に福岡の戸島家にいる…と、連絡があった」


「なんですって! それはどう言うこと?」


「何でも桜と冬彦は俺らの離婚話のゴタゴタでかなり参っていたらしい…。それで密かにあおいちゃんや夏美ちゃんと、家出の計画を立てていたようだ。それはいかん!…と思った修一さんや姉貴が二人を連れて行くことしたってさ。それにしても、姉貴の奴、何を考えているんだ。俺らに何の断りもなく、桜と冬彦を連れて行くなんて…。こんなの誘拐と変わらないじゃないか…」


「じゃあ、二人は…桜と冬彦は、今、福岡にいるってこと?」


「そうだ…」


「ちょっと、そうだ…じゃないでしょう? 今からでもいいから、義姉さんの所へ行って、連れ戻して来てよ」


「気持ちは分かるけど、無理だ…」


「何でよ?」


「『全ての問題が解決するまでは、子どものことは心配するな!』だってさ。何より、桜と冬彦の二人が、『父さんと母さんが仲良くできない家には帰りたくない!』と、電話口で言っていた。あんなことを二人の口から直接聞かされるとは思ってもいなかった…」


「ありえない! あんたもゆりさんも何を考えているの? 桜と冬彦は私がお腹を痛めて産んだ子どもよ。勝手なことは許さないんだから!」


 ショックのあまり、小秋はそのまま冷蔵庫にもたれかかった。そして、ズルズルと冷蔵庫を背にして、倒れこまずにいられなかった。なんだ、この展開は…。


 そんなの、ありえない! ありえない! ありえない! 辰雄と話をしていても、らちがあかない。電話を切って、堪えきれずに、声をかみ殺して泣き出した。


「私が何をしたって言うのよ? 悪いのは全て、浮気をして、浮気相手を孕ませた辰雄じゃない…」


と何度もつぶやきながら…。ただ、止まらない涙を流し続ける。夏カレーを煮込んだなべが焦げ付いていたが、もうどうでもよかった。でも、火事になってはさすがにまずいので、やっとの思いでコンロの火だけは止めた。


「おい、もしもし…。もしもーし! あっ、電話切れているし…」


 辰雄はどうしていいのか分からず、夏の夜空の下を、あてもなくさまよい続けた。このままでいいはずがないことは分かっていたけど、どうすることもできなかった。


 しばらく、さまよいながらあれこれ考えたが、結局、いつものように岡川のいるアパートへと戻った。とりあえず、この日起こったこと全てを岡川に話せば、彼女だけは分かってくれるに違いない…と辰雄は思った。

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