羽田空港にて
桜と冬彦は電車を乗り継いで、羽田空港に着いた。二人はコツコツと貯めた無けなしのお金を使って、どうにか空港にたどり着いた。
「姉ちゃん、もうお金がないけど…。どうするのさ? まさか、荷物に紛れ込んで福岡へ行くの?」
冬彦が不安そうに姉の顔を見た。そんな顔を見たら、こちらまで不安になると桜は感じた。でも、桜と冬彦には強い味方がいる。
桜はそのことを知っているからこそ、勢いだけでここまで行動に移すことができた。しかし、勢いだけで話を進めたので、冬彦に説明する時間は全く取れずにここまで来てしまった。
自分がけしかけたとは言え、何一つ知らないのに、よく冬彦は着いて来たなと桜はしみじみと思う。
「冬彦、お姉ちゃんが何も計画せずに空港まで来たとでも思っているの?」
ゆりおばさんが迎えに来るまで、まだ時間があった。冬彦を少しでも安心させようと思って、これまでの流れと、これから起こることを一つずつ説明することにした。
そうしないと、桜まで不安になりそうだった。それを聞いて、冬彦は頷いたものの、相変わらず不安そうにしている。
「あのね…さっきも話したでしょう。修一おじさんも、ゆりおばさんも、あおい姉も、夏美ちゃんも、みんな、私達の味方だって…」
「それが、信用できないんだよね…」
「なんで、信用できないの? もう、何度も説明しているのに…。でも、もうすぐ、ゆりおばさんが迎えに来てくれるから大丈夫!」
「姉ちゃん、気は確かか?」
冬彦には、あまりも急な展開で訳が分からなくなっている。どうして、そんなに都合のいい展開になるのか、全く理解できなかった。
一方、桜はどうにかして、冬彦に今回の家出旅行の全貌を伝えようとしていたが、弟が全く取り合ってくれないので困っていた。もうこうなったら、おばさんが来るのを待つしかない。さすがに冬彦だって、おばさんを見れば、全てを納得してくれるだろう。
「あっ、いた、いた。桜ちゃん! 冬彦君!」
しばらくすると、二人の前にゆりが現れた。桜はホッとした。冬彦は驚きのあまり、変に裏返った声を上げて、目をパチクリしていた。
それから、二人はゆりに抱きついた。これまで張りつめていたものがあふれ出したのか、桜は思わず泣き出した。それにつられて、冬彦も泣き出す。ゆりはさらにぎゅっと二人を抱きしめる。二人はいつになく伯母に甘えた。
「二人だけで、よくここまで来られたばい。よく頑張った。桜ちゃんも…、冬彦君も…。もう、大丈夫! よし、今からおばさんと一緒に福岡に行きましょう。おじさんも、あおいも、夏美も、二人が来るのを楽しみに待っているからね」
ゆりは右手で桜と、左手で冬彦と手をつないだ。そして、三人は歩き出す。三人はチェックインカウンターで三人分の航空券を買ってから、そのまま保安検査場へと入って行く。
それからしばらくして、三人はそのまま福岡行きの飛行機に乗り込んだ。やがて、飛行機は羽田空港を離陸して、ぐんぐん高度を上げて行くのであった。
冬彦は桜のことをやっぱり姉ちゃんは違うな…と思わずにはいられなかった。たった二歳しか年齢が変わらないはずなのに、すごくしっかりしているし、度胸もあるし…。とにかく、姉ちゃんを信じてついて行ってよかった…。冬彦はふあふあとした綿菓子のような雲を見下ろしながら思った。




