不思議な家族会議
「おい、これは一体どう言うことなんだ? あおい、夏美」
修平は強い口調で言った。あおいと夏美はテーブルの前に座っている修平とゆりに問い詰められていた。あおいと夏美はお互いの顔を見合わせている。どちらも少しばかり青ざめている。
「どうも最近、様子がおかしいと思ったのよ。桜ちゃん達に家出をさせるようにそそのかすなんて、一体、何を考えているの?」
「お父さん、お母さん! 桜ちゃんはね、辰雄おじさんと小秋おばさんが仲悪くなって、二人が離婚しようとしているから、それで苦しい思いをしているんだよ。助けてあげないと…」
夏美は自分達のやろうとしていることの正当性を力強く訴えた。あおいも力強く頷いた。修平は力なく肩をすくながら言う。
「だったら、何で、お母さんやお父さんに一言でも相談してくれなかったのかな?」
「そうよ。お父さんもお母さんも、桜ちゃんや冬彦君のことをずっと心配していたのよ。だから、どうにかしようと二人であれこれ考えていたのよ。ねえ、お父さん」
ゆりの言葉に修平は頷いた。彼はいすから立って、ダイニングテーブルの周りをぐるぐる回りながら言った。
「この問題は、子ども達だけでどうにかできる問題じゃないんだ。だいたい、東京にいる二人がどうやって福岡まで来れる? まだ、二人とも小学生なんだぞ。とてもじゃないが、歩いたり、電車に乗ったりして来れる距離じゃないんだぞ…」
あおいと夏美は何度も頷きながら聞いていた。二人は初め、今まで貯めたお金を桜に送ろうと考えていたのである。
そこで貯めたお金をおろすために母・ゆりにお金をおろしたいといったのだ。今までそんなことなんてなかったのに、急にそんなことを言い出したので、ゆりは娘達の行動や発言を不審に思い、二人を問い詰めたのである。その結果、子どもだけの家出計画が明るみに出た。
「それにもし、桜ちゃんや冬彦君が家出して、何か犯罪に巻き込まれたらどうするの? このご時世、子どもだけで新幹線や飛行機に乗るのはすごく危ないことよ…」
あおいと桜はあからさまに頭を垂れた。自分たちの思いつきが、いかに軽率だったのか、かなり反省させられた。
「そうは言っても、たとえ、あおいと夏美が何もしなかったとしても、いずれ、あの子達は家出をしていたと思う。もし、何のあてもなく、あの子達が家出をしていたら、それこそ、もっと大変なことになっていたに違いない。だったら、夏
休みの間は桜ちゃんと冬彦君の二人にここへ来てもらった方がいいの」
ゆりは遠くを見ながら言った。娘達は喜び、父は微笑んだ。ゆりがまだ子どもの時に親が離婚しようとして、ゴタゴタしている時、弟の辰雄と一緒に家出したことがある。
あてもなく、夜の闇を子ども二人で歩くことがどれだけ怖いことか…。今でも、あの日のことを時々思い出す。辰雄だって、あの思いをしたはずなのに…。どうしてだろうか?
「まあ、とにかく、今回は事情が事情なだけに仕方ないとしても、本当だったら、家出をそそのかすようなことをしてはいけないことは、二人とも分かるよな?」
「ごめんなさい…」
父・修平が言ったことに対して、あおいと夏美は素直に謝った。それを見て、安心したのか、修平はテーブルの周りをグルグルと回るのを止めて、再びいすに座った。
「よし、二人が分かってくれた所で、本題に入ろう。さっきも言ったように、今回は特別な事情がある。お母さんも言ったように、桜ちゃんと冬彦君に夏休みの間、ここに来てもらおうと思う。そうしないと、あの二人がどこか変な所へ家出してしまうかもしれないからね。そうなっては大変だ。だから、今回は特別に桜ちゃんと冬彦君の家出に一家全員で協力しようと思う。それでいいね。あおい、夏美」
あおいは大きく頷いた。夏美は喜びのあまりにいすから立って、父に抱きついた。ゆりは家族団らんできることの幸せをかみしめていた。




