少女達の秘密会談(1)
桜は従姉妹の夏美とメールしていた。メールの内容は辰雄の浮気についてであった。
桜:ねえ、夏美ちゃん。昨日、母さんが話していたんだけど、父さんが浮気したんだって。
夏美:え〜っ! マジで! 辰雄おじさんが浮気するなんてびっくり! 小秋おばさん、そう言うの許さない感じがするから、おじさんとおばさん離婚するかもね…。
桜:やっぱり、そうなるのかな…。最近ね、父さん、まったく家に帰って来ないんだ。
夏美:それって結構ヤバくない?
桜:やっぱり、ヤバいよね…。(苦笑)私、どうなるのかな?
夏美:そんなの…私もわからないよ。とりあえず、姉ちゃんに話してみる。
桜:わかった。あおい姉によろしく!
夏美:何かあったら、またメールしてね。
夏美は桜からもたらされた情報を早くあおいに話したくてうずうずしていた。あおいはバレー部に所属していたため、いつも帰りが遅かった。
いつもなら、姉とろくに話をすることなく、さっさと夕食を食べて、風呂に入って、しばらくテレビを見たらすぐに寝てしまうのだが、この日ばかりはあおいの帰りをひたすら待った。とりあえず、ごはんと風呂をすませて、姉の部屋で姉の帰りを待った。こんな面白い話を誰とも共有できないなんてつまらない!
「ただいま」
ようやく、あおいが帰って来て、夏美の心はワクワクした。あおいは一度荷物を部屋に置いた後、慣れた手つきでさっさとご飯と風呂を済ませて、再び部屋に上がって来た。そして、ようやく夏美が自分の部屋にいたことに気付いたらしい。
「夏美、どうして私の部屋にいるの? もしかして、ずっと待っていたとか?」
「姉ちゃん、ちょっと聞いてよ。姉ちゃんにどうしても話したいことがあってさ…」
「ちょっと、どうしたの。私は今から宿題しないといけないから忙しいのよ!」
「まあ、いいから…。とりあえず、このメールを見て!」
「これって、桜ちゃんからのメールじゃないの」
「そうだよ」
「それがどうしたの? えっ…、これってマジなの?」
桜のメールを見たあおいは、思わず言葉を失った。そして、どうして、妹がわざわざ自分の部屋で待っていたか、ようやく理解したのである。これは逆の立場だとしたら、夏美と同じように姉の帰りを待つだろう。間違っても、親に話すようなマネはしない。
「ねえ、姉ちゃんは辰雄おじさんと小秋おばさんのこと、どう思う?」
「どう思うって…。おじさんが浮気しちゃったわけだから…。おばさん、すごく怒っているんじゃないの?」
「それって、二人が離婚するってこと?」
「まあ、そうなるんじゃない…。私だったら、そんなことされたら離婚する! 夏美も嫌でしょう? そんなの…」
「確かにそうかも…」
年頃の少女にとって、こんなに興味がそそられる話はない。あおいは宿題をしないといけないことも忘れて、辰雄と小秋の話に夢中になっていた。