「あたしの座る場所」1
月曜日の恒例朝礼で、あっさり謎は解けた。
「新規部署として、営業推進室を設ける。大手設計事務所との連動で、物件開発のみを行う。まずは準備室開設としての辞令を発表する」
専務がもったいぶって名前を読み上げた3人の中のひとりに、山口君がいた。
「準備室期間は引継と同時に新規部署の立ち上げを行うものとする。以上」
三枝さんの名前はまだ出てこないけど、大方の予測はつく。
新しい部署が始動したときに、彼女のデスクがそこに行くのだろう。
おそらく、山口君の推薦で。
席につくと、山口君の隣で津田君が焦った顔をしていた。
その横には要領を得ない新人・萩原君が座ってるんだけど、先輩。
「山口さんがいなくなったら、相談相手がいなくなるじゃないですか!」
「それ、父の言うセリフじゃないから。お父さんまで保護者欲しがってどうすんの」
社内からいなくなるわけじゃなし。
山口君、涼しい顔。
「だから、野口は残すから」
はい?あたし?
「もう、緘口令解除だからいいの。候補メンバーの中に、野口も入ってたの。俺が反対した」
「なんで?」
津田君と顔を見あわす。
事務として使いにくいなんて理由なら、あたしのプライドが許さない。
「お子様の津田とそれに指導される萩原のフォローは誰がする?」
あ、信用してもらってるんだ。それならいいけど、あたしは保育士か。
あれ?
「メンバー決定段階から、山口君が仕切ってるわけ?」
「新部署立ち上げ内定の時、決定してたのは室長と俺だけだもん」
打ち合わせがやけに多いとは思ってたんだけど、隠しおおせるところが買われたんだろうか。
立ち上げって責任重大じゃない?実績では文句ないだろうけど。
当然のような顔してるし。やっぱりイヤなヤツ。