表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/28

「気に入ってるから」4

少し朝寝坊して、昼からまた現場に行くという山口君と一緒に家を出ることにする。

「疲れるね」

「仕方ない、俺の仕事だし。他の部署に無理言ってるんだから、俺だけ休暇ってわけに行かないでしょ」

作業ジャンパーの下にネクタイ。

洗面所でお化粧してたら、山口君が横に立って「口紅つける前に」なんてキスしていく。

こういうタイミングはかるの、上手いんだよな。


「忙しいんなら、無理に時間とらなくてもいいよ」

そう言うと、山口君は曖昧に笑った。

「話したいことがあるのかと思って」

「そういうわけじゃないんだけど」

本当は、津田君に見せた顔をあたしも見たかっただけ。

でも、いいや。満足しちゃった。

昨夜ってやっぱり、甘えてたんだよね。


乗換駅で手を振って、ぶらぶらとウィンドウショッピングしながら、街を歩く。

気がつくとあたしは上機嫌で、なんだか優しい気分になっていたりする。

ああそうか、と自分で気がつく。

あたしは山口君に恋をしたいのだな。

成り行きのそのままじゃなくて、彼がどんな人だか理解して好きになりたい。


好きだ嫌いだって言うより先に「そういう関係」になってしまって、気は合うし居心地も悪くなくて

お互いの都合が合う時だけ、よそ行きの顔して一緒にいるのは楽だ。

生の感情は重たいもの、相手が持っていることに気がつかない筈はなかったのに、それをやりとりするのを億劫がって、見えにくいものを「無いもの」としていたんだ。

山口君が見せたくないのなら、見えない振りして感じ取れば良いのに。


自分がどうなっていくのか見極めるのなら、それくらいの芸当をしないといけない。

なんせ敵は「あの」山口肇なんだから。

笑いながらこっちの感情だけ引っ掻きまわして煙に巻く、くらいのことはしかねない。(津田君と同等はイヤだ)

あたしがあたしをどうしたいんだか、見てやる。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ