第5話:愛と物理の最終デバッグ
フェリシアとエリカ――物理と論理の頂上決戦。レンチとタブレットが交錯する中、リリィへの想いがすべての壁を突き破る瞬間が訪れる。
「まだ諦めないの…?」
青白く光るタブレットが浮遊島を無機質に凍らせる。エリカ・カウフマンの冷徹な笑みは、世界を秩序で縛ろうとしていた。
「諦める理由なんてないわ。君の笑顔がある限り!」
フェリシアは魔導レンチを握り、地面に叩き込む。衝撃波が島を揺らし、腕に反動が走る。長時間の干渉で計算精度は微かに乱れたが、瞬時に補正される。
「物理で…無理よ!」
エリカが指先で論理を操作する。しかしレンチが作る微細な亀裂が魔力供給ラインをずらし、タブレット画面は赤と青に点滅。論理の支配は一瞬で崩れる。
「私にとっての世界は、君の存在以外はノイズ――理解できる?」
フェリシアは振り返らず、震えるリリィの手をしっかり握る。
「効率至上主義だけでは愛は測れない。理解して出直してきなさい、この素人!」
モノクルが赤く光り、レンチが空気を切る。衝撃波と魔力奔流が重なり、タブレットの操作は完全に停止。腕に残る反動を押し込み、フェリシアはリリィを安全な位置へ導く。
「くっ…な、何を…!」
初めて表情を崩すエリカ。非合理な愛が、すべての論理を凌駕した瞬間だった。
空中の魔力残骸が塵となって風に溶け、島の基盤は安定する。リリィは安堵の涙を流す。
「あなた…本当に、私だけを…?」
「当たり前じゃない。代わりのいる世界なんて必要ない。君が笑う限り、世界を何度でも再構築する」
レンチが太陽を受けて輝き、二人を包む。
背後でエリカは小さく微笑み、タブレットを鞄に仕舞う。戦う相手ではなく、理解者として、静かに二人を見守る。
――こうして、世界の理は物理と愛によって再構築され、フェリシアのデバッグは完了。リリィの笑顔が新たな定数となった。




