第7部 第5話:主人公削除
フェリシアを突破した外側は、次の手を打つ――「フェリシア削除」。主人公が消され、より都合のいい物語へ差し替えられる。だがレンチだけは残り、誤差の力は消えない。
《NEXT ACTION : DELETE FELICIA》
言葉を失う。
消す。
存在を削除する。
レンチを握り直し、吐き捨てた。
「……それが編集者のやり方かよ」
削除は進む。
身体が砂のように崩れ、指先が透明になる。
「……リリィまで……?」
胸の奥で叫ぶ。届く相手はいない。
だが、消される記憶や感情が胸を刺す。
コンソールに次々候補が表示される。
《REPLACEMENT LIST》
《SELECT NEW PROTAGONIST》
《Candidate A : PURE HERO》
《Candidate B : TRAGIC SAINT》
《Candidate C : ROMANTIC PRINCE》
《Candidate D : ERICA》
フェリシアは乾いた笑いを漏らす。
「……物語ってのは、綺麗に終わるためにあるんじゃねえ!」
身体が崩れても、レンチだけは黒く光る。
誤差の色が濃くなり、外側の秩序にノイズが走る。
《ERROR》
《UNAUTHORIZED DATA TRANSFER》
レンチは、リリィが消えかけた世界へ落ちた。
世界に落ちたのは、フェリシアではなく――“黒いレンチ”だった。
指先に残る熱と記憶が、物語の境界を揺らす。




