第7部 第2話:編集者(オペレーター)
外側でフェリシアは、無数の世界が同時に管理されている現実を知る。コンソールの操作音が響き、窓の中の世界は次々と書き換えられる。リリィを守るため、フェリシアは外側の規則に抗おうとする。
キーボードの音が止まらない。
カタカタ。
カタカタ。
世界の心臓のように、規則正しく響く。
フェリシアはレンチを握りしめ、窓を覗く。
穴は塞がれ、広場の亀裂は消えている。
リリィの姿はまだあるが、輪郭は薄い。
削除が再開しようとしている。
「……クソ……!」
周囲の無数の窓を見渡す。
世界は動き続け、目に見えない手によって操作されている。
声も姿も見えない。聞こえるのは作業音だけ。
カタカタ。
カタカタ。
巨大なコンソールが浮かび上がった。
白い画面に黒い文字。
《OPERATOR CONSOLE》
《USER : UNKNOWN》
《ACCESS LEVEL : ROOT》
フェリシアは息を呑む。
「……ルート?」
目に見えない上位の存在。
世界を作った者。
フェリシアは理解した。
エリカですら駒に過ぎない。
レンチを肩に担ぎ、フェリシアは笑った。
「じゃあ簡単だ」
「上を叩くんだ」
だが、白い輪が足元に広がる。
身体を固定される。ルールだ。
世界の外側のルールが、彼女を縛る。
「……拘束かよ!」
フェリシアは叫んだ。
「リリィを返せ!!」
コンソールの文字が答えた。
《REPLY : NO》
返事は一言。
リリィは返らない。
世界の支配は冷酷だ。




