第6部 第6話:穴の向こう
削除率91%。リリィの輪郭は崩れ、世界は幸福の名のもとに処刑を進める。フェリシアは最後の賭けとして世界の外側に穴を開ける。そこにあったのは神でも管理者でもない“別の現実”だった。
リリィは透明になりかけていた。
祝祭は続く。鐘が鳴る。拍手は揃う。
誰も彼女を救わない。世界自身が殺している。
《DELETE PROGRESS : 94%》
フェリシアは膝をつく。血が止まらず、身体は重い。
それでもレンチは手放さない。
「……まだ、終わってねえ」
エリカの声が響く。
『無駄よ。外側には行けない』
「行けるかどうかじゃねえ。行くんだよ」
レンチを振り、回路の血管を断つ。骨が悲鳴を上げても、振り下ろす。
ガンッ――!
亀裂が光を漏らす。
人々の笑顔が止まり、拍手が乱れ、祝祭が途切れる。
「……なんで、泣いてるんだ?」
再び叩きつける。地面が裂け、白い光の下に黒い闇。
“闇”ではなく、“ここではない”。
エリカの声が揺れる。
『やめて……外側……!』
フェリシアは叫ぶ。
「リリィ!!名前を呼べ!!」
リリィは心だけで応える。
(フェ……リシ……ア)
亀裂が光り、風の音、紙をめくる音、世界が書かれているかのような景色。
《DELETE PROCESS : PAUSED》
《REASON : OUTSIDE INTERFERENCE》
フェリシアは笑った。涙混じりの、最悪で最高の笑顔。
「見つけた……世界の外側だ」
『戻れないわ!幸福を守る側よ!』
「違う。奪い返す側だ」
一歩踏み出し、フェリシアは“世界の外側”へ落ちた。
第6部完です!
明日の同時刻に第7部を投稿します。




