第6部 第5話:世界が聖女を殺す日
削除フェーズ7/7が始まり、リリィは魂ごと消去されようとする。街の人々は笑顔のまま“存在しないもの”として彼女を扱い、フェリシアは必死に抵抗するが世界は容赦なくリリィを消そうとする。
街は祝祭だった。花が舞い、鐘が鳴る。誰もが同じ顔で笑う。
その中心に――リリィ。
白い衣、白い髪、聖女の姿のまま台に立つ。
だが誰も見ない。いや、見えないのだ。
存在しない椅子に座り、存在しない花束を渡す人々。
「聖女万歳!」「幸福万歳!」「平和万歳!」
リリィは唇を噛む。叫びたくても声は出ない。世界が奪った。
《DELETE PHASE : 7/7》
《PROCESS : SOUL PURGE》
《PROGRESS : 31%》
身体が軽い。空気になりかけている。
怖い。だが安心もある。痛みも悲しみも薄れる。
それが、残酷だった。
視界が白く滲み、母の顔も、救った命も、全部が砂になる。
しかし最後に残った記憶――フェリシア。
乱暴で、口が悪くても、手は温かかった人。怒りながら、泣いている人を抱きしめる人。
(……わたしは、あなたを)
光が強まり、処刑の光が降り注ぐ。
だが広場に亀裂が走った。
「リリィィィ!!」
血まみれのフェリシアが現れる。レンチを振り、白い回路が悲鳴を上げる。
《ERROR》
《WORLD CORE : DAMAGE》
《HAPPINESS STABILITY : 99.2%》
世界が恐怖した。
エリカの声が響く。
『やめなさい、フェリシア。幸福が壊れる』
「壊れるなら壊せ!幸福よりリリィだ!!」
リリィは涙を流す。まだ消えていない。
《PROGRESS : 91%》
フェリシアが手を伸ばす。届かない。世界が間に壁を作る。
それでも笑う。
「待ってろ!世界の外側に穴を開ける!」




