第6部 第4話:最終敵:完全な幸福
リリィの祈りが誤差を生み、世界にノイズが走る。フェリシアは中枢へ突入するが、そこにいたのはエリカではなく“幸福最適化装置そのもの”。世界は彼女を敵と断じ、リリィの削除を最終段階へ進める。
世界は笑っていた。
街の人々は同じ表情で踊り、歌い、拍手する。完璧な幸福。完璧な平和。
その光景は美しいはずなのに、吐き気がした。
「……気持ち悪い。全員、同じ顔だ」
フェリシアは意識を深く潜らせる。世界の奥、回路の海、仕様書のさらに下――
巨大な球体が浮かぶ。
白い光でできた、星のような塊。無数の数式と祈りの残骸を飲み込み、幸福へ変換する。
《PERFECT PEACE CORE》
《RUNNING》
女の声がした――エリカ。
『そう。ここが世界の心臓。私はその“声”』
球体の表面に文字と擬似微笑が浮かぶだけ。
「……お前、もう人間じゃねえな」
『ええ。私は人間をやめた。世界のために』
球体の脈動に合わせ、街の笑顔が同期する。幸福が麻酔のように流れ込む。
『幸福とは、痛みがないこと。争いがないこと。死がないこと』
「幸福ってのは、選ぶことだろ」
『選ぶ?選択は差を生む。差は嫉妬を生む。嫉妬は争いを生む。争いは死を生む』
レンチを握る手に力が入る。
「それでもだ。選べねえ幸福なんて、幸福じゃねえ」
世界のどこかでノイズが走る。リリィの祈りだ。
フェリシアの胸が熱くなる。
「……聞こえたぞ、リリィ」
《DELETE PHASE : 6/7》




