第6部 第2話:世界の仕様書
フェリシアは抹殺対象となりながら世界の内部へ潜り、幸福を定義する「仕様書領域」に到達する。そこには自由意志を危険と断じる冷酷な文章が並ぶ。
世界の奥には紙が浮かんでいた。
無数の板が宙に漂い、文字が勝手に整列していく。
《SPECIFICATION AREA》
《ACCESS : ADMIN ONLY》
管理者だけが触れられる領域――世界の台本。
フェリシアはレンチを握り、最初の板に目を落とす。
《HAPPINESS = STABILITY + PREDICTABILITY》
「……幸福=予測可能?」
乾いた笑いが漏れる。
「幸福じゃなくて、家畜だ」
次の板。
《FREE WILL IS A SOURCE OF CONFLICT》
自由意志は争いの原因。争いは幸福を減らす。だから世界は自由意志を排除する。
フェリシアは拳を震わせる。
「自由があるから喧嘩する。喧嘩するから仲直りがある。仲直りがあるから愛があるんだろ」
さらに板は続く。
《PRAYER CREATES DESIRE》
《DESIRE CREATES CHANGE》
《CHANGE CREATES ERROR》
祈りは願いを生む。願いは変化を生む。変化は誤差を生む。だから世界は祈りを嫌う。リリィは削除されるべき存在だ。
フェリシアは拳で板を殴る。壊れない。それでも殴らずにはいられなかった。
《TERMINATION SEQUENCE : PROGRESSING》
《ADMIN FELICIA : 63%》




