第6部 第1話:削除カウント:7
リリィ削除まで残り7フェーズ。教会に隔離された彼女は、街の人々の記憶から自分が薄れていく異常に気づく。一方フェリシアは抹殺対象となりながらも、世界の内側へ潜り続ける。
最初に消えたのは、名前だった。
「……リリィ様」
神官は呼んだはずなのに、言い終わると首を傾げた。
「……失礼。今、私は誰に話しかけていましたか?」
リリィは息を呑む。
「わ、わたしです。リリィ……」
喉を震わせ声を出す。だが音は形にならない。世界が許さない。
神官は微笑み、頷く。
「そうですか。なら問題ありません」
問題しかない。
扉の向こう、世界は静かに削る。存在を薄め、記憶から消す。
《DELETE PHASE : 1/7》
《TARGET : LILY》
《PROCESS : MEMORY FADE》
リリィは小さく笑った。
聖女として、誰かの祈りを抱えて歩いてきたのに、最後は誰にも覚えられず消える。
「……フェリシア……」
その名だけは残った。胸の奥が少し温かくなる。
扉の外から、衛兵の声。
「聖女はどこだ?」
「祝祭の飾りだ」
リリィの指が震える。存在しないもの。
床がかすかに揺れた。教会の魔法陣が乱れ、白い線が黒ずむ。
《ERROR》
《ADMIN FELICIA INTERFERENCE》
「……フェリシア……!」
胸が熱くなる。祈りを、願いを、最後まで守る。
《DELETE PHASE : 2/7》
《PROCESS : IDENTITY ERASE》
リリィは息を吸う。怖い。でも温かい。
あの人が戦っているなら、ここで負けるわけにはいかない。
第6部です。
リリィが「世界から忘れられていく」恐怖。




