表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪された聖女を拾ったので、世界の理(バグ)を物理的にデバッグします。~モノクル知能令嬢の、愛と演算の再構成(リビルド)~  作者: かめかめ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/54

第5部 第2話:幸福の処方箋

フェリシアの意思に反して、世界は幸福の最適化を開始した。街から怒りも悲しみも消え、人々は揃った笑顔で拍手する。救われたはずの世界は、静かに“人間”を捨て始めていた。

幸福は、薬みたいに撒かれた。


フェリシアは玉座に縛られたまま、視界だけを街へ飛ばされる。

管理者権限。遠隔観測。遠隔介入。

世界が与えた鎖は、同時に監視カメラでもあった。


通りでは、昨日まで喧嘩していた男と女が向き合う。

怒鳴り合うはずの二人が、突然、同時に微笑む。


「君が正しい」

「あなたが正しい」


そして、抱き合う。周囲が拍手する。

完璧なタイミングで。


――気持ち悪い。


フェリシアは奥歯を噛みしめた。

あれは仲直りじゃない。感情の削除だ。摩擦の除去だ。

人間を、滑らかな部品にする作業。


市場では魚屋の親父が客に頭を下げる。

「今日は魚が安いぞ!」

客は笑顔で頷く。誰も値切らない。誰も怒らない。誰も冗談を言わない。


「……死んでるみたいだ」


そのとき、広場の片隅で、ひとりの少女が泣いていた。

肩を震わせ、嗚咽を漏らす。生の感情だ。


フェリシアの胸が一瞬だけ軽くなる。まだ残ってる。誤差が。


だが次の瞬間、少女の頭上に光が降った。

柔らかな白い粒子が髪に落ち、頬に触れる。


少女は泣き止んだ。

涙が途中で止まり、表情が空っぽになる。


そして笑う。

理由もなく。命令されたみたいに。


「……やめろォォォ!!」


フェリシアは玉座で叫ぶ。レンチを叩きつける。無音。壊れない。


視界にログが流れる。


《SADNESS DETECTED》

《CORRECTION COMPLETE》

《HAPPINESS RATE : +0.4%》


「幸福率?ふざけんな……!」


数字で測れる幸福なんて、幸福じゃない。

悲しみがあるから喜びが生まれる。痛みがあるから優しさが必要になる。

世界はそれを全部、ゴミみたいに削っている。


ログの色が赤く変わった。


《NEXT OPTIMIZATION TARGET》

《TARGET : SAINT LILY》


フェリシアの心臓が止まりかけた。


「……やめろ」


喉が乾く。教会のリリィが映る。

彼女は祈ろうとしていた。声にならない声で。


フェリシアは歯を食いしばり、玉座を睨む。


「リリィに触れるな……!」


世界は返事の代わりに告げた。


――【NEXT OPTIMIZATION TARGET:SAINT LILY】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ