第4部 第4話:許可されない祈り
祈りを受け取るはずの聖女リリィに、誰の願いも届かなくなった。教会は穏やかに「祈りは不要」と告げる。世界が最適化されるほど、彼女の存在理由は削除されていく。
祈りの声が、来ない。
リリィは教会の中央で目を閉じていた。
いつもなら胸の奥に流れ込んでくる願い。
助けて。
救って。
生きたい。
今日は何もない。
空白だった。
「……おかしい」
背後で神官が微笑む。
「聖女様、ご安心ください。祈りは不要になりました」
「不要……?」
「世界が最適化されましたので」
言葉は正しい。
だからこそ恐ろしい。
「じゃあ……私は……」
扉が乱暴に開いた。
「おい」
フェリシアが入ってくる。
「祈りが不要? ならお前らも不要だろ」
神官の笑みは揺れない。
フェリシアはしゃがみ込み、リリィの頬に触れる。
「顔上げろ」
「……フェリシア」
「お前が必要だ。世界がどう言おうが、私はそう決めた」
涙が落ちる。
この教会で唯一の揺らぎだった。
フェリシアは床を叩く。
無音。
「破壊行為は推奨されません」
そのときリリィの瞳が一瞬だけ無機質に光った。
「……今、誰の目で私を見た?」
モノクルを起動。
――【ACCESS DENIED:LILY】
フェリシアの指先が震えた。
リリィの不安と、フェリシアの暴力的優しさ。最後にログで突き落とされる感覚。




