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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

不幸虫の幸い

作者: ぽぴ



 私の母は異常者だ。呼吸をすると二酸化炭素の代わりに嘘が排出されるし、尊重や反省といった人間的な文化をまるで知らない。


 関わる人を不幸にしては、次の宿主ターゲットを見つけ、一息で飛び立って去っていく姿は、さながら虫のようである。


関わる人を不幸にする虫。

その名も「不幸虫ふこうちゅう

私の母は人の姿をした不幸虫だ。


 そんな不幸虫の母と、私は共に暮らしてきた。身体的な暴力はもちろん、GPS機能を使った居場所の特定や、私の友達と勝手に連絡をとり、友達に嘘を吹き込んで私が学校で孤立するように仕向けるなど、精神的な被害もたくさん受けた。



 私が不幸虫と関わりたくないと考えても、不幸虫は狡猾にも「母親」という皮を被ってこちらに飛んでくる。私が必死に助けを求めても、世間せけんは不幸虫を止められない。なぜなら、母親が子供に構うのは愛情と捉えられるからだ。



 傍目はためからは、私が恥ずかしさから母親を拒否しているように()()()のであり、まさか、皮膚の下、更には心の深奥にまで虫が入り込み、寄生しはいしようとしているとは考えないのである。



 本来であれば、母のような不幸虫は法によって断罪されるできである。しかし、「母親」いう皮は免罪符でありながら、罪を覆い隠すための隠れ蓑でもある。


世間が不幸虫を捉える事は至難の技だろう。

対峙した子供は自ら不幸虫に対処するしかない。



 時に、子供が親を殺すような殺人事件で加害者である子供に同情が集まることがある。


 例えとして、「滋賀医科大学生母親殺害事件(母親が子供の人生を支配した事で殺人事件に発展した)」を上げるが、この事件のように親の精神的支配が長期的に続き、子供ではどうすることもできない環境では、子供自ら「親」という檻を壊すしかないのである。



 もし叶うなら。私も「母」という檻を壊したい。ずっと息が苦しい。息を吸うたびに膿んだ傷から膿が流れ、陸にいるはずの私は毎日、膿でおぼれてる。


「(母を殺すしかない)」


 何度もそう思った。「社会よりも刑務所で暮らしたほうが安心できる」、「母の居ない世界が私の幸福だ」そんなことを考えながら生きてきた。


でも、ずっと実行していない。


 なぜなら私は、精神的にとても強いからだ。膿で溺れたままでも、人生を走り続けることができている。


 母のような不幸虫が持つ、短慮で衝動的で反省をしない気質を私は持ち合わせていない。自分1人では生きていけない事を理解してるし、自分の言動が長期的に人の人生を変えてしまうリスクも知ってる。



 私の母は不幸虫である。関わりを絶って暮らしている私の心を未だにむしばみ続けている虫である。だからこそ、私は自分の子供に「ルカ」という名前をつけようと思う。


 私の家に続く負のサイクルを私の代で断ち切り、すべての生物の共通祖先である「LUCA」にちなんだ名前を持つ我が子には、自由な世界を探索してほしい。そして、不幸ではない、新しい家系の始まりになってほしいと思う。


子供が望むならどんな事でも応援しよう。

分からない事は一緒に考えよう。

間違っても、私は不幸虫にならない。


 私は強い。不幸虫の元に産まれた事は不幸であるが、強く産まれることができたことはさいわいである。この事実は不幸虫である母にとって、「不幸虫の幸い」と言えるだろう。




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