第5話 追放令嬢、最強魔導師として輝く瞬間
魔導大会の決勝戦。会場は熱気に包まれ、観客席からは興奮した声が飛び交う。魔法陣が敷き詰められたステージには、序列上位の貴族生徒たちが並び、冷たい視線でエリスを見つめていた。
「序列最下位のくせに、よくここまで来たな……」
高位貴族の少年がつぶやく。だが、その目の奥にはわずかな警戒も混じっていた。
エリスは深呼吸をして、手のひらに魔力を集める。仲間たちの視線が背中を押す。
「リオ、セリーナ、ありがとう。私、やるわ」
光の魔法陣がステージ上で輝き、観客の声が一瞬で静まる。
審判の合図と共に、エリスは魔力を解放した。
風と雷、炎と光──複数の属性が融合し、宙に舞う。魔法は暴走しかけたが、彼女は冷静に制御し、圧倒的な威力を発揮する。観客席から驚嘆の声が上がる。
しかし、決勝戦の途中で、不穏な影が現れる。
貴族上位生徒のひとりが魔法陣を妨害し、エリスの攻撃を封じようとしたのだ。瞬間、会場がざわめく。
「……やってくれるわね」
エリスは静かに呟き、魔法の軌道を調整する。手首の動きひとつで、暴走を逆に跳ね返し、相手の魔法を自らの光の盾に変換した。
観客席からは驚きと称賛の声が入り混じる。
「序列下位の生徒が……!」
試合後、陰でエリスを妨害していた貴族生徒たちは顔色を変える。
「まさか……制御まで完璧に?」
その中には、侯爵家の手先として送り込まれた者もいた。
エリスは静かに彼らを見下ろし、言葉を放つ。
「私を見くびった代償、ちゃんと覚えておいてくださいね」
力強く、しかし優雅な微笑み。
それは、追放され、辱められた過去を知る者にしか理解できない、冷ややかなざまぁの微笑だった。
決勝戦を終え、講師が称賛の声を上げる。
「序列下位でも、努力と才能でここまで来られる。君は紛れもなく覚醒した魔導士だ」
エリスの仲間たちが駆け寄る。リオはにっこりと笑い、セリーナは涙を浮かべる。
「やったね、エリス!」
「ええ……これからは、私の力を誰にも止めさせない」
夜、学院の屋上で星を見上げながら、エリスは心の中でつぶやく。
「追放された私が、こうして勝利する。侯爵家、見ていてください……次は、あなたたちが驚く番です」
異世界での自由、最強魔導師としての名声、そしてざまぁの瞬間──すべてが、ここから始まったのだ。