第4話 学院の陰謀と魔導大会の本戦
春の空が柔らかく学院を包む中、魔導大会の本戦が間近に迫っていた。校庭には、練習をする生徒たちの声が響き、魔法陣が光を放つ。
エリスは仲間のリオ、セリーナと共に、学院の隅で最後の調整を行っていた。
「明日が本戦ね……」セリーナが手元の薬草を整えながら呟く。
「ええ、私たちなら大丈夫。あの予選の失敗も、無駄じゃなかった」エリスは微笑む。胸の中には、制御できなかった魔法陣の感覚がまだ残っていたが、それは決して恐怖ではなく、成長の証だった。
一方、学院の奥では、貴族上位の生徒たちが集まっていた。
「平民のエリナがここまで来るとはな……」高位序列の少年が小さく鼻で笑う。
「何か手を打たないと、予選での失態を取り返されるぞ」
陰謀の匂いが空気を満たす。エリスの兄の手先──侯爵家に通じる者たちが、すでに学院内で動き始めているのだった。
夜、寮の窓から学院を見下ろすエリス。灯りが揺れる中、リオがそっと声をかけた。
「明日、全力で行こう」
「ええ……そして、私の力を見せる」
セリーナも微笑み、二人の手を軽く握る。
仲間の存在が、胸の奥で揺らぐ不安を静める。
その夜、エリスは静かに魔導陣を描き、手のひらに力を集中させる。
光が指先から迸る。規格外の魔力が、周囲の空気を震わせる。
「……これが、私の魔導」
誰にも見せない決意が、彼女の胸に深く刻まれる。
大会本戦の会場には、学院全体が集まっていた。華やかな衣装、緊張の面持ち、魔法陣の光──まるで異世界の祝祭のようだ。
エリスは序列低めのままステージに立つ。周囲の視線は冷たく、貴族たちの嘲笑が耳に届く。
「序列最下位のくせに……」
しかし、彼女の瞳は揺るがない。
試合が始まると、仲間の助けもあり、エリスは自分の魔導を思い切り発揮した。光と炎、風と雷──複数の属性が融合した彼女の魔法は、観客を驚かせる。
だがその瞬間、競技場の一角で不穏な動きがあった。高位貴族生徒の一部が、魔法陣に干渉しようとしている。まるで誰かを妨害するために仕組まれたかのようだ。
エリスは一瞬で察する。
──これは偶然じゃない。
侯爵家の陰謀の影が、すでに学院まで伸びている。
彼女は拳を握る。
「……私が、止める」
次の瞬間、魔法陣から迸る光が暴走しかけたが、エリスは冷静に手を動かし、光を制御する。観客席からは驚嘆の声が上がる。
試合を終えた後、講師は驚きと称賛を混ぜた声で告げた。
「序列下位でも、力を制御し、工夫することができれば、これほどの威力を出せる。君は、確かに覚醒した魔導士だ」
その夜、エリスは仲間と共に学院の屋上で夜風に吹かれる。
「自由に……なれるかもしれないね」セリーナがそっと呟く。
「ええ、そして……いつか、あの侯爵家に、私の力を見せつけてやる」エリスの瞳は、闇夜の星よりも強く光っていた。
──異世界での戦いは、まだ始まったばかりだ。だが、確実に、追放令嬢としての復讐の序章は動き出していた。




