表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/18

私は良いと思うよ


全く意識していなかった言葉を、他者から指摘されること、たまにありますよね。

私の記憶で、それってあんまり、と言われてびっくり鮮烈であり、今も、どうなんだろう、良いのか悪いのか、と思っている言葉があります。


「私は良いと思うよ」

です。


若かりし頃の私は、友達とデパートに行き、ウインドウショッピングしていました。

素敵な髪飾りがあって、これどう思う?と聞かれて、私は言いました。


「私は良いと思うよ。」


って。

それを聞いて、友達は、「それって、私は良いと思うけどね、と言いつつ実際はあんまり良くない」というように聞こえるよ、と。やだなーって顔をしながら私に伝えました。


ええ!?

そんなつもりは、なかった私です。

でも、私がなぜそういう言い方をしたか考えてみると。

私は自分のセンスに自信がないのです。実家は同腹の兄弟が割といる事もあって、貧乏でありました。おしゃれに属する事には、あまり触れていません。


お金を使って買い物をすること、物の消費に慣れていて、良い物を知るセンスのある人には分かりにくいのかもしれないのですが、センスも育てねばならず、それにはお金という学びの対価、経験はそれなりにかかります。

工夫すればお金がなくても、ある程度どうにかなるかもなのですが、そうするには、元々審美眼の資質があったり、なかなか賢く情報を集めたりと、情熱がないといけないのですよね。ぼーっとしてたら、学べないのです。


私には、他の人の評価も含みな、素直な言葉「うん、良いと思うよ。」が、到底言えなかったのです。


その時は「うん、ごめんね、そういう意味じゃなかったんだけど、気をつけるね」とか言ってなんとかなったのですが、胸がぐるぐるする気持ちがしたものでした。


今でも時々言ってしまいます。

私は良いと思う、と、物だけでなく、様々な事に触れて折々に。

それには、他の人はどう思うかは、私が決められません、分かりません、という気持ちが含まれています。良いって思う人もいるし、良くないな、って思う人もいるよな、って。


皆が良いと思ってるよ!

的な事を、なるべく言いたくないのです。わからないから。

責任の範囲を小さく限定しているとも言えるし。それをきっちり示したいという気持ちもあります。自分が確かに言える範囲は、そこまでである、と。誠実でありたくもあり、小さくもあります。


考えすぎか。

自分が良ければ、良いと思うよ、でいいじゃないか。

自分の良いと思っているものを、他の人に、良いでしょう?って主張する、問う気持ちがあまりない。

自分が良かったと思っていても、実際は粗末なものだったり、センスが悪いものと見られていたりしたことが、結構ある。自分なりのリスク軽減もそこにあります。

などなど、うーむ。とも思います。


いっそ突き抜けて、どんなに周りが認めていないものでも「良いでしょう?」と良き点を紹介できるくらいなら良いかもしれない。

しかし、そこまで突き抜けては、いないのです。


今では働いて長く、消費の経験をある程度して、自分の身の丈に合ったものを選んで、という納得がそこそこできています。物、事の経験を積んで、良いと思うよ!が、前よりは素直に言えています。他の人がどう思おうと、私は良いと思う、という自信がなくもない。のですね。


前に比べて減ってはいるものの、「私は良いと思うよ」を、そのままの言葉ではなく、色々な言い回しではあるけれど、使ってしまう。


私は、私が良いと思うところを、貶したり笑われたりと害されたりしたくない気持ちと同じように、他の人の良いと思う悪いと思うを、限定したくない、害したくない、って気持ちがあるかもしれません。

あなたはどう?って言いがちです。


対する人は問われるのがめんどくさい、って事はあるかもしれないですね。


私が歳を重ねて、経験を重ねて、どういうスタンスで発言していくかは変化するのかもしれませんが、友達に指摘された時の、ぐにゃん、ぐるぐる、とした胸の中を、忘れる事はないのでしょう。


書いてきて思ったけど、若いという事は、経験不足なのだから、それだけで自信がないってことあるよなあ、と思いました。

多少人に会ってきて、若くても自信ある人はいるので、まあ、そんな事もいえるよ、程度ですけれどね。


うん、これからも「私は良いと思うよ」を言っていきたいです。

でも、「良いでしょう?」の紹介する気持ちも、少し多めに持ちたいかな。


誰かに、良き悪きを押し付ける事はなく、だけど、どう?

と言ってみましょう。


私にこの考えをもたらした、かの友達は、住む場所がお互い遠ざかり、交流が途絶えていたのですが、先日鬼籍に入られていた事が分かりました。突然のお知らせでした。


友達よ。

あなたの投げかけた石は、私の中で、今も波紋を広げています。

誰かと会って、話をして、時間を共有することは、他者をもって自分を作ることでもありますね。

あの頃、一緒に遊んでくれてありがとう。

ご冥福をお祈りいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ