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寮生活と自分の中の年齢


寮生活。それは物語の中で、何とも魅惑の舞台ではないでしょうか。

若く多感な時期の少年少女たちが、一つ所に集まって寝起きすれば、何かが起こるに違いない。

大人だったら、あーね、となーなーにするところを、彼らは未熟で初々しい剥き出しの自分そのままに、ごちゃごちゃと触れ合っては何かを生み出す。

その何かとは、いわゆる青春、というやつなのでしょう。


さて私、竹 美津、寮生活を送った事がございます。高校を卒業して、栃木県に進学しまして、新設した民間の寮に入りました。民間の寮とはいえ、そこにいるのは同じ学校の同学年の新入生たちばかりです。

長閑なキャンパスで、楽しく、また若さゆえの苦しさ(後から考えればアホだったなぁと思えるような)もありつつ、卒業して就職をして、と流れ流れてきた次第です。


若い方は、ご自分の将来について、どのように考えてらっしゃるでしょうか。ああしたい、こうなりたい、というのが、明確にある方は、それで良いのです。頑張れば良いんだ。

でも、明確にない場合もありますよね。


私は臆病者でしたので。

興味は、本や漫画にあって、漫画家さんのなり方みたいなのにはグッと惹かれていたのですが、修行が大変そうでしょう?それに、将来を保証してくれるものも、何もない。

貧乏な家に生まれて、自営業は良くないよ、浮き沈みがあるから、と父親に言われて育ち、看護士なんかどうだ、と勧められて。

ぶるるるる!と首を振ったのです。

自分が何か命の選択などに関わる場面でやっていける気がしない。絶対保たない。


私は自分についてあまり分かってないこともありますが、その時は流されず看護士を目指さなくて良かったと思います。全く向いてないと今でも思う。父は手に職をつけさせたかったのみたいだけど、良い職業だからって、皆がなれる訳じゃないんだ。


結局、すぐ就職したくはないな、と思い、その気持ちは父に言わずに、教師になるってこと……を言ったらしいんだけど、自分では覚えてないんですよね。教師にならなかったので、長く父には、なるって言ったのに、って気持ちがあったみたいです。

私の進学には、奨学金をもらいつつもお金が結構かかったみたいで、姉が就職していたとはいえ、実家はなかなか厳しいこともあったようでした。


そんなのなーんも考えずに、キャンパスライフを送っていた私。親は、お金が苦しいとはあまり言わないですね。私も分かっているはずだったので、浮き沈みのある職業にエイヤッといく勇気はなかったのですが、やっぱりアホだったので、甘えていたんですねえ。


でも高校の先に進学できて、そこで猶予があって、寮生活を送れて、のんびり成長してきた私にとって、それも必要な時間であったかな、と思っています。多分すぐ就職したら世の中に負けて凹んでたと思う。

イフはないのが現実であるけれども、実家に住んで就職してたら、また違った人生だったのでしょう。


どれもこれも、私の選択で、私の人生ができてきました。後悔、などというものではなく、これで良いのだ、と思いつつも、その周りにモヤモヤ〜っと、色々な事があるのだよなぁ、と思いを至らせられるのは、時が過ぎてからです。自分が成長していないし目が向いてないから、その時には分からない。


寮では、ちゃんと仲良しの友達ができましたよ。何となくできるものです。

朝と晩に、食事も出る寮だったので、誰と食べるかみたいなのが自然と決まってきます。食器は洗ってもらえるのだけど、お箸は自分で洗ってね、ってことで、お箸洗い渋滞が起きたり、その仲間ごとにまとめて洗ったりするようになり。


テレビは食堂にしかなくて、ネットなんてまだまだの時代だったので、テレビっ子だった友達が携帯テレビを持っていたのをびっくりしたりして。電波が入りにくかったので、その子は良く、廊下の突き当たりの窓辺で携帯テレビを見ていましたね。


洗濯機が何台かあって、順番を待って洗濯しなきゃならなくて、私、よくあそこで生活できていたよな、って思います。順番の取りっことか、そういう勢いのある事がめちゃくちゃ苦手で、われ先に、とっぴ!するのがダルくてねえ。いつ洗濯していたんだろう、覚えてないけど、過不足なく生活していたから、できていたんだなあ。

いつだったか、干しっぱなしで風雨が激しい一夜をほっぽらかしてしまい、洗い直そうと取り込んだズボンのポケットから、ポロポロ、と避難していた虫がこぼれ落ちてきて、ひええ!となったりも。


お風呂も様子を見て混んでない時に入る、という感じでしたね。沸いてからすぐ入る派と、様子見派と、ギリギリ終い湯に入る派。

色々いるから上手くいっています。

同じ年代の子らと、お風呂に入るのは最初気恥ずかしく、まあそのうち慣れて、他の人はこんなふうに身体を洗うのであるなあ、などと違いも……そんなにジロジロ見はしないですけど、ふーんと思ったりしたのを覚えています。


寮の部屋は、一室を半分にする仕切りがあって、それは天井までは届いていないのです。机とベッドがあって、いっぱいくらいのスペースです。仕切りが完全じゃないので、同室の子と、試験勉強を乗り切るために、手紙のやりとりを空いてる部分でやりながら何とか、なんてやってみたり。


何でだったか事件があって、悲しくなって大号泣してるのを、同室の子にギョッとされたり。


寮の同室の子と部屋は、1年ごとに変わりました。あと、同室の子と相性が良くなかった場合、話し合いで入れ替えたりもしてた。そんな話し合いで、どうしたいか話し合ってても決まらないからじゃんけんで決めよう、と私が言った際、それは良くない、最後まで話し合いで決めるべきだ、と言われたりしたのも、あーなんかそんなことあったな、って今思い出しました。

結局じゃんけんで部屋分けしたのだけど、話し合い派の子は、残念がっていたなあ。


世の中話し合いだけで決まらないんじゃない?話し合いは平行線にもなるじゃない?とにかく決めなきゃなんだから、と私は思ったのですが、大人になっても、参加する人、皆が不満のないよう、満足する取り決めをすることは、本当に難しいのだよなあ、と今は思います。


眉毛を描かれた犬がいて、まゆけんと名付けて笑ったり(ひどい)。

泣いたり笑ったり、していたなぁ、と懐かしく思い出します。

家族2も寮暮らしをしたので、その時の話とか聞いて大分面白かったなって思いました。家族2の進んだ方向は美術関係だったので、私は「ありかよ!そんなの!そっち方面行って良かったの!?ズルい!」と少し思った。

まあそんなの、そっち行きたいって言わない方が悪いです。芸術方面の若者たちの話は、まあ面白いね。どこか激しさがある。


若者って未来にジリジリ導火線に火がついてぶるぶるしているバクダンみたいなものですよね。

どの人も、弾けてゆきたい衝動を内に秘めている。


そんな者たちが集まって何もない訳がない寮暮らし、自分以外の人と、身近に触れ合い、他者と自分との境目を認識する、良い機会でした。


私は夢を時々みまして、印象的な夢は覚えています。

夢に出てくる人物は、自分の反映ではないか、と思ったりもしてるのですが、寮生活の頃みたのは、赤ん坊の夢でした。

目を瞑っていたのが、瞼をくりくり、と触られて、きょろ、と見開いて辺りを見回している。

自覚的に、あの頃の自分の中身は、赤ん坊で目覚めたばかりだったな、と思っています。


病を得て実家に帰ってきてからは、よく高校生くらいの自分の夢をみていました。学校に行かなきゃ、遅れちゃう!って夢です。


今は、あまりそういう、自分の中身の年齢に関わるかな?って夢はみないのですが、強いて言えば、少し前は、一人暮らしをしてた頃の夢で、その頃の部屋を片付けなきゃ、って夢だったり。この間は年齢は成人してそうくらいの微妙なお年頃で、年賀状をみんなに出さなければ、って思って作っている夢でしたね。

何となく、なんでそんななのか、分かる気がする。

私はみんなに、小説を書いて、年賀状を送っているのかもなあ、なんてね。


寮の話から夢の話で恐縮ですが、私の中身は、まだそれほど成長していないようでして、身体の老いとチグハグでもありながら、だからこそ毎日、割と呑気にるふるふと、楽しくやれてるのかもな、と思えもします。

寮生活も、その後の生活も、他者とどれだけ融通をきかせあって、その中で自分がどうあるか、生きていく居場所をつくるか、という学びであるのでしょうね。

そうして、だからこそ、時々人は、1人になりたいのです。


起きたこと、触れ合いの意味を、自分の中で咀嚼するために。

ぶつかって傷ついた自分を、癒すために。

それを長い時間かけて繰り返し交互にやっていくのが成長で、多分きっと、死ぬまで続くのでしょう。



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