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守り続ける麦畑

作者: 藤乃花

朝は早い時間に起き、雀や鴉から麦畑を守る。案山子として生まれたからには、それが使命だと認識している。麦畑の持ち主、麦賀穂むぎがみのるさんが手作りした案山子のハタモリ君は、穂さんが外出する時目を何倍にも光らせて鳥達から麦を守る。「じゃあ、ハタモリ君、ワタシは副業のヒーローの仕事に行ってくるから、麦の番を宜しく頼むね」「はいっ!必死のぱっちで麦達をお守り致します!穂さんもヒーローのお仕事気を付けて行ってらっしゃいませ!」「ありがとう。お土産にマスコットキャラクター『そらやん』のキーホルダー買ってくるよ」穂さんは素朴な笑顔を見せて、仕事先の関西国際空港へと出掛けた。麦畑の農作業と空港のヒーローとの両立をこなすなんて、流石は麦賀穂さんだ!さて……一人残されたハタモリ君の眼差しが、上空にいる鳥達を捕らえる。鳥達もまた極上の麦を味わおうと目を光らせ、ハタモリ君を睨み付ける。空と土の境界線に、ピリピリした空気が流れた。空は曇りだし、雲行きが怪しくなってきた。暗い空からより怪しい気配がする。(来る……!)ハタモリ君が気持ちを張りつめた瞬間、曇り空から黒い影が飛んできた。黒い影が狙うのは、極上の麦。鳥達がヤジを飛ばす。「闇鴉さん!待ってました!」「憎らしい案山子なんか、やっちゃって下さい!」「あの麦は我ら鳥族のモノだ!」黒い影……悪名高い闇鴉。鳥の世界を牛耳り、闇の王と鳥達から呼ばれている。「闇鴉!麦は渡しませんよ!」「ふん!私に挑むなんて、いつもながら恐い物入り知らずもいいとこだね!」「どんな相手でも、怯みません!」闇鴉は大きな翼でハタモリ君を攻撃するが、そこで負けては案山子の名がすたる。「何がなんでも……!」攻撃を受けながらも、耐えるハタモリ君……。「絶対にその麦を……」止めることなく、攻め続ける闇鴉……。「守ります!」「食い潰す!」本気の叫び声が交差し、ハタモリ君と闇鴉が体を押さえ合う。「……!」」ハタモリ君が闇鴉を押さえ彼の両手が塞がるのを見て、大きなくちばしが麦へと向かった。「させません!」強く片手を振りかざすと、ハタモリ君のその手が闇鴉のくちばしを塞いだ。闇鴉の動きが止まる。身動きとれずにいる闇鴉を押さえつけ、ハタモリ君は鳥達を睨み付けた。「立ち去りなさい!」怒りの形相に怯んだ鳥達は次から次へと飛び去っていく。騒ぎが静まり、ハタモリ君に穏やかな表情が戻った。「今回も敵のふりをして麦を死守してくださり、ありがとうございます」「こちらこそ、美味しい麦をありがとだわさ。穂さんには羽の怪我を手当てして貰った恩があるもの」闇鴉はハタモリ君がくちばしに突っ込んだ麦を頬張り、鋭かった瞳をぼんやりさせて笑みをこぼした。「感謝します。闇鴉さん、今度美味しい栗の実を食べにいきましょう」「鳥達あいつらには内緒でね」「内緒です」二人(?)は秘密の約束を交わし、小さく笑い合った。











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