表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
66/86

66 決勝戦

「「「ロビン様~!」」」


 相変わらず、大人気の仮面の騎士『ロビン』様。

 剣技大会は、いよいよ大詰め、つまり決勝戦を迎えていた。

 『聖騎士』の名に恥じない実力があると、リシャール様も認められている。


 さて、仮面の騎士様の想い人なのだけど。どうやら今、この会場に来ているらしい。

 本当に一体、誰なのだろう? 私ではないのは明らかなのだが。

 しかし、目ぼしい相手が居ないためか、ロビン様の想い人が私であるように噂は続いていた。

 そんな謎の噂も今日で収束することだろう。


「聖騎士、リシャールよ! 戦う前に今一度、貴方に問おう!」


 ロビン様のパフォーマンスが始まる。興行的にはありがたいので、もうお任せだ。


「君の愛する者は、私と同じか!?」

「いいや、違う! 俺が愛する者は、エレクトラ・ヴェントだけだ! 俺も貴方に問おう、仮面の騎士ロビンよ!」


 リシャール様も慣れてきたのか、声を張り上げて応じる。

 ああいう風に、声を通らせることができるのも、たぶん騎士団の『上』に向いているのだろうな。


「貴方の愛する者は、私と同じか!」

「いいや、違うな! 俺が愛する者の名はエレクトラではない!」


 あ、きっぱり否定した。じゃあ、この試合は何なの? となる。

 そう。観客的に盛り上がっていたのは『二人の男が同じ女を取り合って戦うこと』なのだ。

 互いに違う相手を求めているなら、別に因縁も何もないのである。


「なんと! では、我々が戦う意味はないのか!?」

「……いいや、あるとも! 俺は、彼女に相応しい男でありたい! そのためにこそ、栄光を手にしたいのだ! いわば、これは……私の男としてのプライドだ!」


 その宣言に『おおお!』という感嘆の声が上がる。

 まぁ、どうせなら優勝を捧げたいと思うのは、理解の範疇よね。


 ……ロビン様が正体を明かせば、それだけでいいのでは?


 まぁ、リシャール様と戦う決勝の相手が弱かったら盛り上がりに欠けるので、彼とリシャール様を反対側に配置していたのは英断だったと思う。

 薄々と、ハリード様では、その役割を担うには力不足だろうと。そんな風に思っていたから。

 ロビン様ならば、その実力に申し分ない。


「では、仮面の騎士、ロビンよ! お前の思う相手の名を聞かせるがいい! 真に俺たちの想う相手が違うのならば……互いにこの試合に懸けるものは、互いの、男としての意地のみだと! 皆に示してみせるんだ!」


 確かに。いつまでもロビン様の想い人が判明していないと、モヤモヤしたものがある。

 いえ、だからこそ『私かも!?』と熱狂している女性も居る気はするけどね。


 ただ、こうしたやり取りにおける彼らの思惑は理解できた。

 きっと、彼らは『爽やかな試合』を望んでいるのだ。

 最後の最後にドロドロとした争いにしたくないと。

 特にリシャール様にとっては因縁の相手が二人も続いてしまったからね……。


「……いいだろう! では、聞くがいい。私が愛を捧げる女性の名を!」


 そこでロビン様は、観客席へ身体を向け、ある一点に手を伸ばした。

 誰かの手を乞うようにだ。


「愛しき者の名、その名は……」


 固唾を呑んで観客席が静まり返る。多くの人々の注目が集まってもなお、彼は怯えない。

 そして堂々と告げられるその名は。


「──セルモニカ・リュースウェル! 現公爵の妹君! 金色の髪に、紫の瞳の貴方だ!」


 ついに明かされたロビン様の想い人!

 リュースウェル公爵の妹君!?


 観客と共に、私はそちらに視線を向けた。

 カタリナ様とエルドミカ様の隣に、彼女が座っている。

 自身の名が告げられるとは思っていなかったようで、驚いた様子だ。

 公爵の妹とは……。


 エルドミカ・リュースウェル公爵は若い公爵だ。

 爵位を継いで、まだ数年程度。ご両親は早くに引退されたらしい。

 公爵位を継承するにあたって、特に不幸があったという理由ではないそうだ。

 そんな公爵の妹君、セルモニカ様。結婚していなかったの? 婚約者はいないの?


 カタリナ様とエルドミカ様は、確か同じ年齢だ。25歳ぐらいだっただろうか。

 私より、2歳ほど年上となる。

 セルモニカ公女は、私より、もっと若い方。まだ十代。

 ロビン様……こと、王太子ユリアン殿下は、去年に成人したばかりだから21歳ぐらい。

 隣国の王女とユリアン殿下の婚約が解消となったのは去年。


 セルモニカ様は、婚約者が居なくて許されるギリギリの年齢だろうか。

 当然、婚約者が居てもおかしくはなかったはずだけど……。

 もしかしたら、数年前から、このようなことになると思っていた?

 カタリナ様やエルドミカ様は把握していたのかもしれない。

 前リュースウェル公爵閣下たちも。


「私は、今日の試合を……愛する者に捧げよう! 正々堂々と、力の限り戦うと! 君はどうだ、リシャール卿!」


 ビッ! と剣を向けるロビン様。


「俺もまた愛する者に剣を捧げる! 正々堂々! 騎士として相応しくあるように!」

「ならば、我らは共に! 愛のために!」

「……愛のために!」


 こうして、この大会で最も清々しくも、情熱のある決勝戦が始まったのだった。


セル『モニカ』・リュースウェル。


ポカポカ。


※年齢設定、間違っていたので修正しました。

※セルモニカの容姿が、リヴィアと被るので瞳の色を紫に変更。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
後20ページか、他作者の作品(浮気(笑))読みながらだから今月中に読み終えるかな? と、詰まらん感想書いてみた まだ十代...いや幾つよ?(苦笑)
決勝戦の開始から リアル時間が1月以上 経過しました。 連載は中断したままです。 作者様にアクシデントでしょうか? 心配です ・・・
やはりユリアンはモニカルートか… それにしてもトルネード様よ…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ