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59 『初めて』の出会い

「フハハハハハハハ!」


 突然の高笑いにビクリとする私。

 本日の試合日程が終わり、午後に空き時間が出来たのでリシャール様とともに、街を歩いていたところだ。


「あれは……『ロビン』様?」

「ですね」


 仮面の騎士が、高笑いを浮かべている。街中で。何しているの、あの人は?


「どうやら、捕り物があったようです」

「捕り物ですか」


 確かに何やら捕縛されている男性が居る。

 凶器の類は近くにないし、あの様子は酔っ払いか何かだろうか。まだ日も高いというのに。

 大会が、お祭りみたいなものだからお酒を飲んでいても不思議ではないけど。


「このロビンの目が青い内は、悪党が世にのさばることはない!」

「「「きゃああああ!!」」」


 何だろう、あれ。英雄のショー? 子供たちと女性陣がロビン様に歓声を上げている。


「リシャール様も、ああいう方向で売り出してみますか?」

「あれはちょっと……」


 ですよねー。

 いえ、ああいう方針のリシャール様も素敵だとは思うけど。

 この街、仮面の男なんて怪しい人に寛容ね。やはり先代からの逸話があるせいなのか。


「何故、試合が終わった後も仮面を着けて活動しているのかしら?」

「あれをどのタイミングで外すのか興味はありますね」


 まぁ、とりあえず護衛も居るみたいだし、大丈夫なのでしょう。

 私とリシャール様は、二人での時間を楽しむことにする。


「あ、レディ・エレン! リシャール卿!」


 ……と思っていたら『ロビン』様から声を掛けられました。

 この流れで!? 何か捕り物を終えて注目を集めた後に!


「……ロビン様」

「いやぁ、このようなところで会うとはね」


 自然と話しかけてくる! 貴方は今、仮面を着けていると分かっているの?


「あはは……」


 リシャール様も苦笑いしているじゃない。


「二人は、これからお出掛けかい?」

「ええ。今日の日程は早くに終わりましたからね。大会が始まるまでは忙しかったですが、始まってしまうとあとは単純なことばかりで。時間が空いたのです」


 ファーマソン家と少し問題は起きたものの、そちらの処理はリュースウェル家に丸投げだ。

 私が出てもいいことはないし、せっかくの後ろ盾は頼りにするに限る。


「それでは、二人の時間は邪魔できないね。今日はご挨拶までに。ああ、しかし。『聖騎士』殿?」

「……なんでしょう、ロビン卿」

「私は、貴公に負けるつもりはない。ですが、同時に貴方たちの愛を応援もしている。その誤解だけはされぬよう」


 その言葉に私とリシャール様は目を合わせる。


「そう言えば、噂になっているようですね。ロビン卿の想い人がエレンさんであると」

「そうなんだ。まさか、そうなるとは思わず誤解を招いてしまって。二人には迷惑を掛けているね」

「いえ、それはロビン様のせいではありませんよ。私たちの方こそ、貴方の気持ちを想い人様に誤解させているのでは?」

「ああ、その点は心配ないよ。彼女は、私の正体について、ご存知ではないから」


 知らないの!?


「……知らないのに、告白されるのですか?」

「もちろん、正体は明かすよ、彼女の前で」


 それはそれでどうなのだろう。ただでさえ注目を浴びているのに、中身は王太子だなんて。


「互いに勝ち進めれば決勝戦での試合だね」

「ええ」

「その時は全力で。『聖騎士』リシャール卿。私も力を尽くす」

「俺も胸を借ります。ロビン卿。……残念ながら、負けて告白することになると思いますが」


 リシャール様が宣戦布告を! しれっと!

 ロビン様も、キョトンとした顔で言葉を失われて。


「あはははは! なかなか言うね、リシャール卿も! ああ、ではそうならないように励むとしよう」

「頑張りましょう、お互いに。正々堂々と」

「ああ、そうしよう! では、さらばだ!」


 さ、爽やかだわ。『さらば』なんて普通、言わないけれど。

 彼があの服装で言うと様になっているのが不思議だ。


「なんだか、凄い人ですね、ロビン卿は」

「ええ、本当に」

「エレンさんは、ロビン卿の想い人は知っていますか?」

「いえ、聞いていません。カタリナ様は把握されているみたいですけど」


 驚きのことがあったけど、そのまま私たちは二人で街を歩いた。

 あまり長い時間ではない。明日も試合があるから夜遅くまでは過ごせないからね。

 私たちなりの時間を過ごして、それで満足して、明日に備えてそろそろ宿へ帰ろうと。


 その時。


「エレクトラ様!」


 彼女がやって来た。いつか来るかもしれない、と。ずっと、そう思っていた人。


「……リヴィア様」


 金色の髪。ルビーのような瞳。公爵の血を引く人。そして。

 ……私から夫を奪った人。

 夢の中でしか話したことのなかった、現実では初めて目の前に立つ。

 聖女リヴィア・カールソンが、私の前へとやって来た。


本日から、WEBコミック「ガンマぷらす」にて、

著作【人生をやり直した令嬢は、やり直しをやり直す。】のコミカライズがスタートしました!

WEBで読めますので、ぜひ!


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― 新着の感想 ―
騎士相手にハッタリかましたのを「少しの問題」と言い切れるヒロインの強さよ…。リシャールのしれっと宣戦布告が良い。
[良い点] レディ、ファイ!
[一言] 次回 『リヴィア、(精神的に) 死す ・・・』
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