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捩れた渇望の正善《後編》

★この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません★


もっと死者を…

    もっと死者を喰わせろ―――



走り出すと同時にアメノさんを呼び出そうとした瞬間、すっと僕の中から透けた神様が現れた。

「アメノさん!」

「仔細承知しておる。急ぐぞ」

そう言うなり僕の腕を掴んだ。と、同時に、僕らはあの神社の鳥居の前に居た。

「小童めが調子に乗りおって、我の顔は仏よりも少ないぞ」

アメノさんが控えめに言ってブチギレているのがわかる。言いたい事はわかるけど、多分何か違う。いつも優しいアメノさんの顔が青筋を立てんばかりにピキピキしている。

「おるのだろう小童が!!!」

そう境内に向かって叫ぶ。空気が震えた気がした。

「粋がるな異端の神」

声と同時に宇迦志羅刀(うかのしらと)が境内に現れた。笑顔のイケメンと茉奈(まな)ちゃんも一緒だ。

「茉奈ちゃん!!」

「おにいちゃん!」

こちらに来ようとする茉奈ちゃんをイケメンが止めた。

「ダメだよ。君はここにいなくちゃ」

いやだと泣き出した茉奈ちゃんを、笑顔のまま腕で拘束する。

「自らの領域の内でなければ何も出来んのか小物が。備えがなければ喰う事も出来んとは」

アメノさんがそう言って近付こうとする。

「よく動く口だ。無駄な事だと知っておろう」

宇迦志羅刀がほくそ笑んで吐き捨てた。

アメノさんが鳥居を潜ろうとした瞬間、バチィッと大きな音を立てて弾き返された。

「アメノさん!!」

慌てて駆け寄るが、境内を睨みつけたまま僕を手で制しながら言う。

「お前も覚悟は出来ているのか、のう、海音(かいと)

笑顔のまま小首をかしげてヘラッとイケメンが答えた。

「まだ諦めてなかったとか、怨霊並みの執念ですね。天冥援命(あめのくらえのみこと)様」

知り合い…?どういう事だ…境内を睨みつけたまま、アメノさんが苦々しく吐き捨てた。

「あれは我の依代だった者だ」





周辺の集落を纏め、治めた。昔から武力が強かった故、片っ端から攻め落とした。人を縛るのは暴力による支配が一番良い。奪い、攫い、蹂躙し尽くした。贅の限りを尽くし、直訴してきた者共を尽く斬り尽くした。弱い者は奪われても、強い者に縋るしかない。面白いように事が進んだ。新たな国盗りのため隣国に攻め入ろうとした時、一人の若造が現れた。あっという間に我の腹心達を薙ぎ払い、そなたのような小物が国を治めるなど片腹痛いと静かに宣った後、我の首を撥ねた。

何が起きたか全くわからなかった。どこの馬の骨とも知らない若造に志半ばで首を撥ねられ、剰え小物呼ばわりとは…腹の虫が治まらず、死して尚あの若造の命を取らなければ気が済まぬ。

毎夜毎夜彷徨い続け探し続けたが、影も形も無かった。この怨み晴らさでおくべきか…山を崩し、川を暴れさせ、疫病を流行らせた。死んでから二度目の霜月まで、思うままに暴れ狂っておった時、祟りを鎮めるなどと宣う神主が現れた。怒りを鎮め護り神になれと。あの男が見つからない以上それも良かろうと考え承諾した。

それから長い年月この土地を見守ってきた。初めの頃は詣る者も多かったが、徐々にその数は減っていった。戦乱の世が明け、太平の世が過ぎ去り、舶来の物が多く出回るようになり、皆着るものが変わった頃には、社の存在すら忘れられた。このまま朽ちていくのか、盛者必衰とはよく言ったものだ。

そんな時、風変わりな神を見かけた。死者の願いから生まれたというその神は、彷徨う死者達を救っているようだった。死者を依代とし、顕現する神。死者の願いから神が生まれるのなら、死者を喰えばもっと力を得る事が出来るのではないか。そうだ、我ははこんな所では終わりとうない。死者も我の力になれば救われるだろう。また暴れてやろうぞ。まずは手足になる者を手に入れなければ。

あやつがよい、あの異端の神の依代。根深い闇を持ったあの男、あれを手に入れる…

そなたが死者に優しくして何になる。そなたの信じてきたものは何一つ間違ってはおらん。それでも信じられねば、我らで道理を作ろうぞ。死者の世界など曖昧なものだ。我に力を貸せ。我の糧になる事こそが、死者の幸せになるのだ。後世に名を残す我のな…





流れ込んできた記憶はあの男の神の記憶なのか。アメノさんも言っていたが、死者を喰らうって何を言っている。そして記憶の中の依代は間違いなく海音と呼ばれたあのイケメンだった。

「今少し時が要る」

アメノさんがそう呟く。時間を稼がないといけないのか。異端の神と祟り神。でも死者を喰う神は、本当に神なのか。という事は茉奈ちゃんは…

「死者を喰って力をつけたら、何をする気なんですか?」

時間稼ぎになるかはわからない。でも聞かずにはいられない。

「この国を滅する。そして生き残った者は語り継ぐだろう。我はこんな所で終わるような神ではないのだ」

高笑いしながら手を叩いて笑う宇迦志羅刀。

「全国の中でも、人もそんなに多くないようなこの場所で忘れかけられて、大層な自信ですね」

煽るつもりはなかった。でも言いたい事はたくさんある。早く救けられなかったと後悔し続け、それでも懸命に死者を救い続ける神様。そして自分の力になる事が幸せだと疑わず、喰らい続ける神。

「我を愚弄する気か!」

「喰った人達が糧になってないと言っているんだ!!」

「君、俺の神様に失礼だね」

割って入ったのは笑顔のイケメン、海音さんだった。

「俺はさ、この神様と新しい道理、ルールを作ったんだ。あんなに悔やんだのが馬鹿らしいよ。死者は神様に喰われて糧になる、俺はただ死者を献上する。それが正義、ルールだ」

ははっと楽しそうに笑う彼に何の同意も出来ない。よく言ったとばかりに満足げな宇迦志羅刀にも。

「どんな世界にも時代にも、道理というものは移ろってきたものだと僕は思っています。何を正義とするか、それも人それぞれでいいと考えています。でも…」

すうっと息を吸って腹に力を込める。

「お前らの道理も正義も認めるわけにはいかない!!!!」


「よう言うた光輝(こうき)

アメノさんが僕の肩に手を置いて境内を見つめている。

「待たせたの。準備は整った。茉奈とやらをまずこちらに戻す」

そう言うと両手を広げて茉奈ちゃんの名前を呼ぶ。すると境内にいた茉奈ちゃんが、アメノさんの腕の中に抱かれていた。

「おにいちゃん!」

僕に抱きついてきた茉奈ちゃんを抱き止め頭を撫でる。海音さんは何が起きたかわからないような顔をしていた。

「その娘を離すでないぞ光輝」

茉奈ちゃんを更にぎゅっと抱き締める。

「小癪な…」

そう言って苦々しく呟く宇迦志羅刀に、アメノさんが鋭く言葉を投げる。

「言い残す事はあるかの、小童」

「お前に我をどうこうする力など有りはしまい!!」

図に乗るな!!そう叫ぶと強烈な光を放つ。アメノさんに当たろうかという瞬間、すっと光が消えた。

「な、何…?」

「我は神通力は大したものは無い。だがお前より千年は長く存在しておる。そして我の名は誰に賜ったか、お前は聞いて知っておるであろう」

「天照は武神ではなかろう!!」

「縁というものはの、神ですら大切にしておるものだ」

そう言った瞬間、闇夜に一筋の光が射した。その光は、静かに目を閉じ合掌したアメノさんを包んだ。神々しいという表現がぴったり過ぎて身震いする。


「おいでませ!!須佐之男命(スサノオノミコト)!!!」

包んでいた光が強烈に瞬いた後、アメノさんの前に和装の男性が浮いていた。

「須佐之男命、推参」

す、須佐之男命?と思った瞬間境内の二人も同じように声を上げていた。

「死者の世界の事には干渉すまいと静観を貫いてきたが、此度は訳が違うぞ。覚悟は良いだろうな」

「待て、我は死者を救っていただけだ…」

「何も成長しておらんようだの、貞重(さだしげ)

狼狽える宇迦志羅刀を意に介さず須佐之男命は続ける。

「祟り神などに祀り上げられてはおるが、そなたは神に成り損ねておると何故気付かん。長い年月を与えられて何も変われぬとは、存在しておる意味もなかろう。立派な名を与えられ、祀られても、何も護れず、死者を蹂躙し続けた。そなたは貞重のままぞ」

すうっと鳥居の前に移動すると「天羽々斬(あめのはばきり)」と呟いた。光る少し欠けた剣が右手に握られ、一振りすると、鳥居が真っ二つになった。そのまま境内にいる二人に近付いて行く。

「ま、待て、待ってくれ!」

海音さんが宇迦志羅刀の前に立ち塞がった。

「俺の正義なんだ!殺さないでくれ!!」

必死な形相で頼む海音さんに、諭すように須佐之男命が言った。

「そなたは逃げただけだ」

そのまま海音さんごと宇迦志羅刀を貫いた。

剣を抜き表情一つ変えぬまま、須佐之男命はアメノさんの前に戻ってきた。

「お力添え、本当に感謝致します、須佐之男命様」

深々と頭を下げるアメノさんに優しい笑顔を向ける。

「後は任せる」

そう言って境内の方を指す。アメノさんは更に一礼して、倒れている二人の元へ進んだ。僕も茉奈ちゃんの手を引いて、声が聞こえる所まで近付いた。


「お前に死者を喰われていたのを知ってから、手を拱いておった。我の力ではお前の力には及ばぬと判断した故、他の神々にも手を貸して頂けるようお願いした。あれから間を置かず、今回接触出来たのは僥倖だった。どうだ、我の依代は優秀だろう」

聞いているのか聞いていないのかわからない状態だが、宇迦志羅刀の体は少しずつ消えていくのがわかる。

「あの優秀な依代だがの、お前を殺した男の子孫だ」

アメノさんがそう告げると、宇迦志羅刀がバッと顔を上げ、目を丸くして僕を凝視した。

「そんな、そんな莫迦な」

「お前は結局あの血筋に勝てんのだ。血眼で探した男は脈々と子孫を残し、お前に止めを刺した。だがお前はもう何も怨めん。あの者に怨みを晴らす事も出来ん。誰の記憶にも残らず、記録にも残らん。一番恐れていた事であろう」

そう言い終えると同時に、宇迦志羅刀は消えた。

「海音よ、何か言い残す事はあるかの」

仰向けで倒れている海音さんは目を閉じたまま答える。

「俺は正しい事を心の底から欲して、実行してきた。生きてる時も死んだ後も、正しい事をしてきた…」

「死ぬ間際の後悔は間違いだったと思うておるのか」

すうっと息を吐き出して、少し目を開けてアメノさんを見た。

「あんたの口車に乗っただけだ」

そしてにっこり笑って消えていった。



何とも言えない後味の悪さを残しつつ、謎の神社の件は幕を下ろした。

巻き込まれた茉奈ちゃんに少しだけ事情を説明し、もう大丈夫という事を伝えると、やっと笑顔を見せてくれた。

「ばいばい、おにいちゃん!」

そう手を振ってアメノさんと昇っていった。

神様同士の闘い、壮絶だった。そしてまさか須佐之男命をこの目で見る日が来るとは…

「感動したか?」

「!?」

驚きすぎて口をパクパクしていると、あはははっと腹を抱えて笑うこの人、いや柱は…

「な、何故まだいらっしゃるので…?」

須佐之男命。数々の書物、日本神話を語る上で必ず名が出る有名神。がっちりとした体にそれに見合わない童顔系の美青年。神様は美形じゃないとなれないのだろうか。

「男前だろ?」

素敵な笑顔で心を読まれた。

「お前本当に顔に書いてるな!」

「お恥ずかしいです…」

さっき顕現した時と印象が全然違う事に驚きつつ、慌てて尋ねる。

「あ、あの、お帰りにならなくてよろしいんですか?」

「いやぁそれがさ、久しぶりにこっちに来たから帰るのもったいなくてさ」

テヘッという声が聞こえてきそうだ。

「久しぶりというと」

「500年ぶりぐらいだな!あいつ全然呼ばないんだもん」

大変不服です、そう顔に書いてある。

「アメノさんとはどういったご関係なんですか?」

「あいつアメノって呼ばれてんの!?いいな、それ!じゃあ俺はスサノさんだな!」

…おう。流石にスサノさんとは呼べない。

「あいつは妹みたいなもんだな。俺の姉さんがあいつに名前を付けたんだ。本人は新参だって負い目感じてるみてぇだけど、死者の事は結構放置されてたんだよな。天国とか地獄とか黄泉とか実際あるんだけどよ、死んだままこっちに留まるって設定がされてなかったんだよな。もちろん迎えに行く係みたいなのはいるんだけどな。そっからあぶれちまったのをあいつが対処してくれてるんだよな。俺の姉さん慈悲深いんだよ。死者の事も嘆いててさ。そんな時あいつが生まれて、しかも死者の願いでってもんだから、姉さんが喜んで名前付けたの」

初めて聞く話しで、聞き入ってしまう。

「んで、本来俺達は手を出せなかったんだよ。穢れるとかなんとかうるせぇ奴らも居るしな。そんなもんで穢れるなら、穢れた神ばっかだっつうのにな!まぁ、住んでる世界が違うっていうのはやっぱりでかいんだよ。でもあいつのお陰で架け橋が出来たんだな」

だからって、依代になって初めて呼ばれた助っ人が須佐之男命は、言葉は悪いけどやばい。

「今回あいつ来るの遅かっただろ?」

確かに今までの感じだと、あの神社を見つけた辺りで出てきててもおかしくはなかったように思う。

「俺と姉さんの所に来てたんだよ。自分では力が足りないから、誰かの力を貸して欲しいって」

なるほど。僕が宇迦志羅刀に接触する事を見越していたのか。

「相手は腐っても神だし、他の神には任せらんねぇし、姉さんは荒事は無理だし、俺しかいないって張り切って来たんだわ」

ちょっと喧嘩してくるわ!的なノリで神殺しに来たのか…

「神から引きずり下ろせたら、あいつにもやりようがあったんだろうがな。数は多くねぇが、死者とは言え人を喰ってたらダメだ。そりゃ太刀打ち出来ねぇわ」

そういうものなのか。一撃で斃したこの柱はとんでもない力を持っているという事はわかった。

「あの、その口調は一体どういう…」

「お?あいつから聞いてねぇの?俺達みたいに実体を持たないのは、思念伝達みたいな形で喋ってんだよ。じゃないと昔の言葉で喋られてもわかんないだろ?方言とかもあるし。んで、伝達されたのを脳内変換してんだな。脳みそないけどな!!」

あははっと笑って僕の肩をばんばんと叩く。誰かさんの顔が浮かんだ。

死んでから結構経つけど、大事な事はあんまり教えてもらってないもんだな。

「さっきの俺は本気モードだったからな!あいつの頼みだったから張り切ったわ」

ぐっと親指を立てて得意げだが、神様のサムズアップはどうなのか。

「あの、腐っても神って事は神殺しって事ですよね?スサノさんは大丈夫なんですか?」

「いいね!スサノさん!!神っつってもしょぼ神だったからな。お前の時間稼ぎの問答にも乗ってきたろ?小物の証拠だ。えっと、なんて言ったか、あぁ、山の主とか川の主とかの弱小版だな。祟り神とか言ってたけど、道真とか崇徳に比べれば鼻くそみたいなもんだし。信仰もされてなかったし、存在自体消したから何の心配もないな」

日本を代表されるような神様なのに、あまりの懐っこさについスサノさんと呼んでしまったが、喜んでもらえてよかった。あと、日本三大怨霊をさらっと比較に出さないで欲しい。しょぼ神というワードセンスは好きだけど。

「この件であいつえらいキレててな、すげぇ煽ったり口悪かったりしただろ?あれは自分に向けた言葉でもあったんだと俺は思うんだよな。死者を喰う神、そのきっかけは自分で、大切な依代まで奪われて。本当なら自分一人で片付けたかったんだろうがな」

確かに今回のアメノさんは様子がいつもと違った。冷徹な感じと哀しい感じが混ざってたし、冷静さもなかった気がする。

「あのしょぼ神には言いたい事言ったようだが、元依代にはなんて声掛けたらいいかわかんなかったんだろうな。あれは5年くらい前に依代になったらしいが、ちょっと特殊な奴だったんだな。法やルールを守るのが楽しい、守っていれば人の気持ちなんて考えなくても良い、守っていれば人の気持も守れる、みたいなな」

そういえばルールとか正義とか言っていたな。茉奈ちゃんにもルールを破ったって。

「だが死ぬ間際に悟って後悔したんだな、そうじゃなかったって。人の気持を考える事や思いやる事は別だって。で、死んだ後あいつが依代にしたんだ。人を思いやる事に後悔したなら、依代になって人に優しくしろと。依代のルールも守るだろうと。まぁその結果が…」

今回の結果という訳か。何が正しいか、何が常識なのか。僕には理解出来なかった海音さんの言葉が、彼にとっての信じるもので、正しい事だった。でも、彼からしたら、僕の正義や信じるものが間違っているという事だったんだろう。初めて会った自分以外の依代は、自分とは全く違う人だった。僕も何か一つ間違えると、あんな風になってしまうんだろうか…

「何回も連れ戻しに行ってたみたいだけど、ずっとあの調子だし、神社に入られたら手が出せねぇしな。そんな状態だったから、俺が来る前、お前啖呵切ってただろ?認めるわけにはいかない!!って。あれ、あいつ嬉しかったと思うよ。何が正しいなんてわかんねぇけどさ、お前らが『救ってる』って事は間違いのねぇ事実だよ。それにお前は大丈夫だ。心配いらねぇ」

神様ってやっぱりすごいな。ありがとうございます。

「あの、アメノさんなら、海音さんが宇迦志羅刀に接触する段階で、止められたんじゃないでしょうか?」

「それな。あいつが察知して依代の所に着いた時には、もう鳥居を潜っちゃってたんだよな。紙一重で間に合わなかったんだよ」

それは悔やんでも悔やみきれないだろう。そして、自分よりも依代を大事にする理由、少しわかった気がする。

ふと思った。もしかして、海音さんは僕が依代って知ってたんじゃないか?だから声を掛けたんじゃないか。最後の軽口は、本心だったのか?

「あの、もしかして…」

「最期の言葉は『ごめんなさい』に聞こえたよな」

少しだけ寂しそうにスサノさんは笑った。

もう二度と聞けないけど、都合が良いと思われても、信じたい。魔が差して宇迦志羅刀の思うがままに行動していたが、心の奥では戻りたいと思っていたと。アメノさんの気持ちが伝わっていたと。前回から間を置かずして、わざと僕に接触してきたんじゃないかと。僕の接触した子を、わざと掻っ攫ったのではないかと。宇迦志羅刀を止めるために、その代償が消滅だったとしても、自分の罪ごと背負って消えたんだと。そしてアメノさんが言ってくれた『優秀な依代』という言葉には、海音さんも含まれていたのではないかと。


「思わぬ所で因縁があったのにもびっくりしました」

「お前の家系は色々面白いぞ。お前も依代とかやってるしな!機会があれば聞いてみると良い!」

伝説がいるくらいだからそうなんだろう。やっぱり今度ゆっくり聞いてみよう。

「さて、その辺ぶらっとしてぼちぼち帰るわ!」

素敵な笑顔でサムズアップしている。

「色々とありがとうございました。お気を付けて」

「おう!あとあいつにもうちょい呼ぶ頻度上げろって言っといて!」

またな!そう言ってスサノさんは空高く浮き上がり、消えた。

またお会い出来るといいな。…500年後は多分無理だけど。


改めて神社の方を見ると、メキメキメキッと音を立ててお社が崩れ去った。これで本当に終わった。次はどこに行こうか、行き先を考えながら神社だった場所を後にした。

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