私
私は自由であるべきだ。
私は空を飛ぶことも海で暮らすことも好きな人と一緒に過ごすことも出来る。
怖い私も良い。
現実の辛さを私の怖さに混ぜて和らげてあげられる。
私は彼らの望む形に変化する。
それが私の存在する理由なのだ。
しかしーーー
あぁ、またか
1人の少年を前にして私は何にもなることができない。
少年はただの眠っていた。
現実に疲れ果て眠ることさえ疲れている。
楽しさにも怒りにも悲しみにも苦しみにも私はなれない。
そうして何にもなれない私を置いて、少年の周りを靄包んでいく。
靄は闇となり世界に溶け込み夜の一部に変化した。
夜になった少年はもう私を忘れてしまうだろう。
私を忘れたから少年は夜になったのだ。
この少年だけではない。
この夜の全ては彼であり彼女であり僕であり貴方なのだ。
夜が無ければ私を見る人すら居なくなる。
だから私を忘れる人たちも必要だ。
私を忘れた人たちがこの世界を作っているのだから。
だから私を見なくていい。
だがせめて……一時でいいから私を思い出して欲しいのだ。
私は確かにあなたの側に居たのだから。




