【自称アンタレス星人】 今日は波動高めで8
アンタレス母船の中をキラキラと輝く光を撒き散らし、誰もが振り返る中、本人は気にも留めずに颯爽と大股で歩く若者の姿を見つけた途端、ギルティガは口をあんぐりと開けてしまった。普段は誰もがうっとりと見つめる御大将の顔が、間抜けな顔になっているにも気が付かず、一時。。。
我に返ると
「いやいやいや」
と、独り言をいいながら、自分のマントに手を掛けると輝きを振り撒き残像を残しながら歩く若者の頭から被せた。
「わっ」
リュカは驚いた声を上げる。
「リュカ、すまない。残念だが、君を離すわけにはいかない。このまま、ミルの船に戻ろう」
マントの隙間から目を出すとリュカムイは、ギルティガの姿を確認する。ギルティガは何やらブツブツと
全くアイツは。。。とか、呟いている。
ギルティガはマントの上から抱き込むようにリュカムイを連れて歩く。
リュカムイは、自分の状態がわかりようもなく、ただ体調が良くなったことを喜んでいただけに、ギルティガの様子に戸惑った。
。。。アイツって、ミルのことか
ギルティガがミルを親しげに呼ぶことに苛立ちを覚える。ミルの姿を思い出し、胸の鼓動が跳ねる。
遠くに街のように屋台がずらりと並んだアンタレスの母船内を見て回る、オリオン族の姫が見え隠れする。
。。。ドクン
こちらは見つかりたくない気持ちでいっぱいだ。けれども、姫は一瞬ビクリと体を反らし、大きく見開いた目をゆっくりとリュカムイに向けた。
そう、縦に光った瞳孔がリュカムイを見た。ザラリとしたエネルギーが人々の間を抜けてリュカムイの元へと流れた。ギルティガがその異様なエネルギーに気が付き、リュカムイを庇いながら、足早に進む。
何やらブツブツと唱えているギルティガをリュカムイは、ぼんやりと眺める。
。。。気分が悪い。体も重い
リュカムイの足取りが重くなったことに気付いたギルティガは、
「しっかりしろ、あと少しだ。あの姫はナニを連れてきたんだ」
リュカムイがハァハァと息を切らせる中、ギルティガはミルの船の扉を開け、船の中に二人は体を滑り込ませた。膝を折って両手を付いたリュカムイの輝きはすっかりなくなり、はじめて来たときよりもさらに顔は色を無くしていた。入ってすぐの部屋にはミルはおらず、通路の奥から声が聞こえて来た。ネルと二人でボソボソと話している。ギルがリュカを支え、二人の方へ向かいながら
「ミル入るぞ!」
と、声を掛ける
「。。。入ってから言わないでよ」
呆れながらの声が帰って来ると、立ち上がって部屋の扉を開けた。ギルに抱えられたリュカの姿が目に飛び込む。
「何が。。。」
手を伸ばしたミルの手をリュカは勢いよく掴むと、力強く自分の体に引き寄せて部屋の壁に押し付けミルの唇を奪った。
ネルもギルも二人で口元を手で覆いラブシーンを見守る。ジタバタともがくミルの手がだんだんと武将のたくましい腕から細いものに変わる。遂には女性の腕へ変化した。
「おやおや、お熱いねぇ」
からかうような口調で部屋に入って来たシノルヴァが、
「でも、これ以上は。。。」
と、引き離そうと手を伸ばした。部屋の中に大きな風が起こり、ぐったりとしたミルを長いものが体をグルグルと拘束していた。
「ナーガ。。。」
ネルがつぶやくのに
「いや、龍だな」
と、シノが落ち着いて答える。
「しかも行方不明だった幻の龍だ。。。」
と、付け加えた。ギルは相変わらず、口元を覆って動かない。こんなときに意外にお茶目な奴である。
朦朧とした意識の中、ミルはシノに手を伸ばした。リュカはミルの体を誰にも触らせないようにグルリとさらに巻き付いた。そんなリュカに
「リュカ、このままではミルの意識は途絶えてしまうよ。そうしたら、何年先で出会えるか分からない。お願いだから、ミルのために力を分けさせてくれ」
優しい声でシノが言いながら、ミルの手を掴んだ。ミルは少し力を取り戻すと呪いを呟きながら、龍になったリュカの背中をさすった。龍の周りを細い糸がグルグルと巻き付く。リュカとミルは、細い糸が作る空間に二人で姿を消していく。
「ミル。。。繭玉なんて。。。」
ネルはしゃがみこんだ。
アンタレス星人は著しく体を損傷した時や体力が衰えた時、繭玉を作りその中で再生する。繭の中で過ごす期間はそれぞれだが、長いものだと1000年眠っていたとされる記録もある。ミルは繭での休眠が少ない。とはいえ、今回の消耗は相当のものだったのだろう。
。。。ミルが自分から繭に入るとは
ギルもシノも事の重大さを感じていた。




