珍味
「ねえお父さん」
1人息子の昇太が、飼い猫のシッポを抱き上げながら声を掛けて来た。
「ん? なんだい?」
「この猫、大きくなって可愛げが無くなったから新しい子猫買ってよ」
「ホントそうよね。
その上何度止めるように言っても悪戯を止めないんだから、子猫の時はともかく大きくなった今はジャマなだけよ」
妻が昇太に同調するように言う。
「そうだな」
私は昇太からシッポを受け取り、猫用キャリーバッグに無理矢理突っ込む。
「明日此奴を山に捨ててから、ペットショップに行こう」
「ヤッター!」
猫を山に捨てに行った帰り道私たち家族は、突然頭上に現れたUFOに乗っていたエイリアンに車ごと拉致された。
私は家族と引き離され、股間につけられた機械によって精子を強制的に搾り取られている。
搾り取られた精子一匹一匹は遺伝子レベルまで精査され、数万台並べられている人工子宮内の、クローン培養で大量生産された卵子に次々と注入されていく。
作業をモニター越しに見ながら手元のボタンを操作している男(二足歩行のゴキブリ(エイリアン))に、上司(二足歩行のゴキブリ(エイリアン))が声を掛けた。
「作業は順調か?」
「はい、しかし残念でしたね。
銀河パトロールの警備艇がウロチョロしていなければ、もう数体捕える事ができたのに」
「仕方がないさ、捕まったら元も子もない。
それに1体だけとは言え捕獲できたんだ、地球人の幼体は愛玩動物として高く売れる。
それで我慢しよう。
それで幼体を売った先にはキチンと伝えてあるよな?」
「はい。
大きくなりすぎたりお買い上げ頂いた幼体に飽きたりしたら、割引価格で新しい幼体と取り替えると伝えてあります」
「そうか、回収した地球人は全部加工工場に送るように」
「分かってます。
地球人を加工した高級食材は我々にとって、最高の珍味ですからね」