ダンジョン配信
詰められる桃井を余所にカッペイは気分良く戦っていた。
「ははっ、絶好調だぜ!」
バフをかけられた時とは違い内から力が湧いてきて、尽きる様子がない。無限に戦っていられそうだ。
カッペイの猛攻に魔王は防戦一方。さらに言うと攻撃自体を受けたくない様に見受けられた。
カッペイの繰り出す拳はマヤや丸古のように目に見えた傷を与えられていない様に見えるが、攻撃を受ける度に魔王は身じろいでいた。
先程まで余裕のある姿と打って変わって、弱々しく見える程だ。
そのまましばらくカッペイは魔王をサンドバッグのようにボコスカと殴り続ける。
「なぁ、コイツどうやって倒せばいいんだ?」
勢いで戦い始めたのはいいが、倒し方について何も知らないカッペイはミユに尋ねる。
「カッペイさん、胸のダンジョンコアを破壊して下さい」
「わかった!」
カッペイは身を正す。両手に全身の光が集中する。
魔王は危険を感じその場を離れようとするも、
「行かせないよ」
マヤと丸古が退路を塞ぐ。
「行くぜ、大、大、聖拳!」
カッペイの拳が魔王の胸にあるダンジョンコアに直撃する。
ダンジョンコアは粉々になり、魔王の身体は泥のように崩れ落ちた。
「おっし、これで倒せたんだよな」
「お疲れ様ですカッペイさん」
「やーやー、お疲れ様カッペイ君」
「…桃井さん、カッペイさんに何か言う事ありますよね?」
「はい、カッペイ君申し訳ない」
「何がです?」
「さっきのアレ、詳しい説明もしてなかったでしょ」
「ああはい、よくわからないですけど上手くいったからいいんじゃないですかね」
桃井の独断による実験についてカッペイは特に気にしてなかった。何も考えてないともいえるが。
カッペイ的には強くなれればOKみたいな感じなので深く考えてないようだった。
「それに桃さんのやることだからまぁ大丈夫かなと」
「…桃井」
「うん、わかってる」
何の疑いもなく桃井を信頼しているカッペイの眼差しを受け、桃井は心を入れ替えたようだ。
「それでこれからどうすればいいんだ?」
「しばらくすればダンジョンの崩壊が始まります。私たちはその前に撤退します」
「これを使うよ」
マヤがダンジョン脱出アイテムを取り出す。
手筈通りでは外に回収班が待機しているので、合流して帰還する流れだ。
しばらくすると海底ダンジョンは完全に消滅した。
カッペイたちの依頼は無事完了した。
その後途中で中断された配信は、編集され動画としてアップロードされる。
魔王はもちろんのことそれに関する部分は大幅にカットされている為、魔人との戦いまでをダイジェスト方式で公開された。
丸古はその後、政府と共同でカッペイのような素質を持った冒険者を育成する通称「プロジェクトK」を立ち上げる。
内容は精霊の憑依ができる冒険者を増やすという計画だ。
このプロジェクトが成功すれば今後勇者や聖女以外でも魔王を討伐できると期待されている。
丸古は以前と変わらず日々ダンジョンに潜り鍛錬を重ねていた。
マヤも相変わらず勇者として色んな場所を飛び回っているが、以前よりかは休みの頻度が増えていた。
カッペイとミユはというと、
「カッペイ様、何を飲まれますか?」
「コーラで」
「あっカッペイさん見て下さい、島ですよ」
専用機に乗り、とある小島に向かっていた。
「あそこにダンジョンがあるんだっけ?」
「はい魔人の目撃例が出ているとのことです」
「近くの施設は自由に使っていいとのことでしたから早く終わらせましょう!」
島にあるダンジョンにて魔人が現れたのでその討伐が今回の依頼だ。
既に島から人々は避難していて、カッペイたち以外は誰もいない。
依頼期間中は島丸々自由に使えるという話で、早く終わらせばその分沢山遊べるのだ。
「それじゃあパパッと片付けようか」
「あっ、久々に配信をしましょうか」
「ん、まぁいいけど」
ミユの思いつきで配信をすることに。
「あー、映ってるか?ん、皆さんお久しぶりです。カワウソカッペイのダンジョンチャンネルです。今回は魔人の討伐を行います。よろしければ最後までご覧下さい」
久しぶりにダンジョン配信を行うのだった。
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