精霊化
カッペイの姿はコツメカワウソから白いオコジョへと変化していた。
「っしゃあオラ!」
威嚇するその姿は迫力はなく可愛らしい。
「いやー、上手くいって良かったよ」
「桃井さん投げる必要あったんですか?」
桃井とミユがやってくる。
「ねぇミユ、あれカッペイ君たよね?」
「ええ、カッペイさんです。また更に可愛くなりました」
嬉しそうに答えるミユ。
「…説明しろ桃井」
「そう怖い顔しないでよ丸古、ちゃんと説明するから。カッペイ君の今の姿は精霊と一体化している状態なんだ」
カッペイの姿が変化したのは精霊化したからだと桃井は話す。
先程行っていたミユの祈祷は精霊顕現の儀式。聖属性の強力な精霊を顕現させる聖女専用スキル。
この精霊はかなり特殊でダンジョンコアの破壊と魔王との戦闘でしか顕現できないが、その力は絶大で精霊が現れた時点で勝確というチートなスキルだ。
現状このスキルがダンジョンコアを取り込んだ魔王に対する最適解なので、聖女は勇者よりも重要な存在となっていた。
桃井は以前からこのスキルについて考察をしていた。
呼び出した精霊を武器又は人に憑依させることができないかと、勇者であるマヤ自身や聖剣など試してみたが上手くいかなかった。
精霊を呼び出すスキルは他にも存在するが、他のものに憑依することはない。属性付与のようにはいかないというのが一般的な見解だった。
しかし桃井は諦めていなかった。粗方試せることはやり尽くしていたが、新たな可能性が出現した。
それがカッペイだ。
カッペイは自身の持つ属性と違う属性を取り込み会得した。
もしかしたらカッペイなら精霊を憑依させることができるのではないか。
更に聖女であるミユとの相性も悪くない。
これならいけるかもしれない。
あとは実証する状況があればと思っていた所に今回の依頼。
当初はカッペイはメンバーにいなかったが、桃井が手を回し参加させることに成功した。
そんなことをせずとも遅かれ早かれカッペイがメンバーになるのは時間の問題だったのだが、桃井にしては珍しく裏で動き回っていた。
早く自分の仮説を試したかったのだ。
その結果が今の状況だ。
まさかここまで上手くいくとは桃井でも予想できなかった。
「…つまりカッペイを実験に利用したと」
自分はおろかカッペイ本人も知らないであろうことに丸古は怒りを隠せない。
「黙ってたのは謝るよ。でもそんなに危険なことじゃないし。ほらマヤちゃんの時だって大丈夫だったでしょ」
「ボクの時は事前に知ってたからいいけど、流石に黙ってやるのはダメですよ」
「桃井さん、カッペイさんに話してなかったんですか?」
ミユはてっきりカッペイは知っているものだと思っていたがそうではなかったらしい。
「わー、ミユちゃんごめん。言おうと思ってたんだけど、忘れてただけなんだ」
桃井が必死に弁解する。
「…お前はいつもそうだな。…はぁ、弁解は後で聞く。とりあえずカッペイは問題ないんだな?」
「ああ、うん大丈夫だよ。姿が変わった以外は問題ないと思うよ」
カッペイの方を見ると縦横無尽に魔王を翻弄していた。
「はっはー、力が湧いてくるぜ」
どうやら絶好調のようだ。
「桃井さん、後でお話がありますので覚悟しておいて下さい」
「はい…」
桃井はこのあと全員から詰められることが決まった。




