認められし者
一方、マヤと丸古は魔王との戦闘を続けていた。
「あーもう、切っても切ってもきりがないよ」
聖剣で魔王の身体をひたすら斬り続けているが、斬ったさきから再生される。
「…交代だ」
マヤと入れ替わるように今度は丸古が魔王の相手をする。
丸古の全身は炎で包まれており傍から見ると焼き豚ならぬ焼きオークのようだ。
丸古が繰り出す攻撃に魔王の身体は焼かれていくがすぐに再生してしまう。
その姿は液体金属のゴーレムのようだが、違うのは全くダメージがないことだ。
「それにしてもカッペイ君は持ってますよね。今回の魔王もだけど魔人も引き当ててたし」
「…強者には試練が与えれる。ダンジョンに認められた証だ」
「ですね」
魔王と戦いながらそんな話をする二人。
倒すことが難しいだけでただ時間を稼ぐだけなら二人にとってはさほど大変ではない。
今回のように魔王がこの形態になることは稀で、魔王討伐経験豊富な二人でも実は対戦経験はそんなに多くない。
試練の門での魔人との戦闘、そして今回の魔王戦と一介の冒険者とは思えない経験をしているカッペイ。
勇者聖女と同行しているからといっても中々起こることではない。
ダンジョンは強者と認めた者に試練を与える。
一部の冒険者に伝わる噂で、ダンジョンが認めた冒険者には試練が与えられる。
強力なモンスターが現れたりダンジョンの難易度が変わっていたりなど、通常では起こらない現象が発生する。
試練の門の攻略の時から既にその予兆が見られ、今回の魔王の戦いで確信に変わった。
カッペイはダンジョンに認められし者だと。
現在、ダンジョンについては判明していることは少ない。
この噂も正直本当かどうか分からないが、少なくともカッペイの実力は本物である。
それは今までの戦いで証明されてきた。
そしてすぐにその実力は披露されることになる。
「あれ、桃井さん何やってるの?」
桃井が掲げた光るなにかをこちらへ向かって思い切り投げる。
「うおぉぉー」
光の正体であるカッペイが叫び声をあげ魔王に突撃する。
強い衝撃を受け魔王が吹き飛ばられる。
「マヤ、叔父さん、交代だ。こっからは俺がやる」
光に包まれた真っ白なオコジョがそこにいた。




