混沌の魔王
順調に進んでいくカッペイ一行。
ここまで来るとダンジョンは全てが黒く染まっており光はなく何も見えなくなっていた。
「…紅蓮、火走り」
丸古が放つ炎は一本の道となり行く先を照らしだす。
「いやー、いつ来ても辛気臭いねここは」
「ホント、同感です。魔王ってやつはなんでこう暗いとこ好きなのかな、全くもう」
桃井とマヤが愚痴る。
「カッペイさんは平気ですか?具合悪くないですか?」
「ん?ああ、別に問題はないな。だから降ろしてくれてもいいぞ」
魔王により変わり果てたダンジョンは、冒険者にとって不利な環境となっていた。
視界が悪いのはもちろんのこと、この黒い空間は耐性がない者には常にデバフがかかっている状態となる。
魔王の天敵である勇者と聖女のマヤとミユは当然として、桃井と丸古もこの空間の耐性があるため問題はない。
今回初参加となるカッペイだが、心配するミユをよそにあっけらかんとしていた。
元々こういう事態も想定されていたのでカッペイは問題ないということはわかっていた。
それでもミユは念の為カッペイを気にしていたが、本人は過保護にされ過ぎて少しゲンナリしていた。
「おっ、ようやく終点かな」
カッペイたちは巨大な門の前にたどり着く。
「うえー、いつ見ても趣味悪いよこの門」
「そうだね、魔王の美的センスはちょっと僕たちには理解し難いかな」
血のような黒い色で染められ、スケルトンやモンスターの死骸の装飾の門は禍々しいオーラを放っていた。
「それじゃあ準備はいい?じゃあいくよ」
マヤが門に手をかけ魔王が待つ中に入ると、
「うわっ」
いきなりの出来事に驚くマヤ。
門の先は水中だった。
「みんな僕に集まって!」
桃井が魔法で皆を包む。
「この魔王はダンジョンの特性を強く引き継ぐタイプなのか」
「ボク水中苦手なんだけどなぁ」
一般的に魔王は似たような姿と能力であることが多い。
しかし今回のように生まれたダンジョンの特性を自身に引き継ぐ場合がある。
この魔王は海底ダンジョンの特性を色濃く引き継いでいた。
「っ!あちらを見て下さい」
「うわー、グロいよー」
「うん、混沌としてるね」
ミユが指した方には海底ダンジョンのモンスター全てを混ぜたようなものがいた。おそらく魔王と思われる。
周りには蠢く影が見える。おそらく眷属と化した魔人であろう。
「どうやら魔人も魔王の影響受けてるね」
「うわーアレもグロい。ねぇ、ボクがやるの?」
マヤが魔王たちの見た目に嫌悪感を示していると、
「…カッペイ。お前の出番だ」
「えっ?」
「…水中で一番動けるのはお前だ。カッペイをメインに戦う。異論はあるか?」
「僕は賛成」
「ボクもいいよ」
「私もありません。カッペイさんならやれます」
カッペイを中心とし、魔王と戦うことが決まった。




