魔王
カッペイたちは順調に海底ダンジョンを進んでいたが、
「あー、やっぱりあったか」
桃井が何かを見つける。
「桃さん何か見つけたんですか?」
「そうか、カッペイ君は知らないか。これ見てごらん」
桃井が示したのはダンジョンの床。端の一部分に黒い染みののようなものがある。
よく見るとそれは少しずつ広がっていた。
「ミユも呼ばれてるからもしかしたらと思ってたけどやっぱ侵食始まってるかぁ」
「やはり魔王がいますか」
マヤとミユは予想通りという反応をする。
魔王。
その名の通り魔人の上位にあたるモンスターで、その存在は世間には公開されていない。
魔王の発生条件は単純で長期間放置されたダンジョンが一定以上成長すると魔王が誕生する。
定期的にモンスターの間引きをしていれば問題はなく、一般に解放されているダンジョンにはまず現れることはない。
発見が遅れある程度成長している今回のような海底ダンジョンには魔王がいる可能性があった。
このようなダンジョンか発見されると規制され、マヤたち一部の冒険者が対応することになっている。
「なんで魔王の情報は公開されてないんですか?」
「それはね、魔王はただのモンスターじゃないんだよ」
魔王はある条件を達成するとダンジョンの外に出られるようになる。それだけではなく配下に置いたモンスター達も同様に連れ出すことが可能になる。
現在では魔王がダンジョンから出た事例はないが、過去に起こった記録がある。
しかしこれはあまりにも現実離れした内容のため、世間では御伽話として認識されている。
その内容はダンジョンから出てきた魔王がモンスターを連れ地上に侵攻をはじめる。それを世界中の冒険者たちが多大な犠牲を払った末、魔王を討伐したという話だ。
現在の一般的な認識としてモンスターはダンジョンから出てくることはない。
そして冒険者達も例外を除き、地上でジョブやスキルを使用することはできない。
この前提があるため、魔王は創作上の存在とされている。
だが魔王は実在する。
この事実を知っているのは国の上層部と関係者、そして魔王に対抗できる極一部の冒険者たちのみだ。
「スキルって地上でも使えるんですか?」
「本来なら使えないよ。だけど魔王が出てきた場合は別だよ」
魔王が地上に現れると、理由は分からないが地上でもジョブやスキルが使用できるようになる、そして魔王が倒されると元戻りまたジョブやスキルは使えなくなる。
「このことは絶対話しちゃ駄目だよ」
ダンジョン外でもスキルが使えるようになる。
たとえ条件が魔王の出現でもこの事実を知れば悪用しようとする者たちが現れるだろう。
その為、各国は団結してこの事実を秘匿している。
「俺に話しても良かったんですか?」
「…カッペイはこのメンバーに値すると認められたんだ。問題ない」
実はカッペイはマヤ、桃井、丸古の推薦を受けていた。
今までの実績と性格に問題ないと判断され、今回のメンバーに加わっていた。
今後はマヤたち同様に国からの直接依頼を受けることになるだろう。
「桃井さん、色々聞いといてなんですがこんなにのんびりしてて大丈夫ですか?」
「心配ないよ、魔王が外に出られるようになるのはまだ先だから」
見つかった魔王出現の兆候はまだ初期のものであるらしい。
この黒い染みがダンジョン全て包むと魔王のダンジョン支配が完了となり、地上へ侵攻してくるという。
「さてカッペイ君への説明も済んだし先に進もうか」
カッペイたちは先に進む。




