紅蓮の王
ボスエリアは浅瀬のような所で足場が悪い環境だ。
モンスターは多数のリザードマン。
当然ただのリザードマンではなく、リザードソルジャー、アーチャーなどのジョブを持つものばかり。
階層ボスは一番奥にいるリザードキング。
水場を得意とするリザードマンの一団を相手にするには少々不利な状況となっていた。
「…端の方に下がっててくれ」
「オッケー、ミユちゃんよろしく」
丸古は桃井たちを下がらせ一人前に出る。
ミユは巻き込まれないよう周囲に結界を貼る。
「…闘気、紅。紅蓮」
丸古の身体は激しい炎で包まれる。
足元含む周囲の水は蒸発し、水蒸気となり丸古を覆う。
炎の勢いは丸古を中心に広がっていき、リザードマンたちのところまで迫っていく。
水は瞬く間に蒸発していき、乾いた土が顔を出す。
遠距離攻撃のできるリザードマンが矢や魔法で丸古に攻撃するも全て炎に阻まれる。
そうしているうちに炎はリザードマンたちに到達する。
炎を受けたリザードマンは次々と燃えていく。
そのまま全滅するかと思われたが、ジェネラルやキングといった上位種は健在だった。
それでも大半のリザードマンは炎により消えていた。
気がつくと周囲は水気がなくなり、炎の輪が丸古とリザードマンを囲むように燃え上がっていた。
形勢は一瞬で逆転していた。
「相変わらず凄いですね、丸古さんの炎」
「あれでまだスキルの前準備なんだから参っちゃうよ。一緒にいる僕はいい迷惑だよ」
炎の輪の外側にいるカッペイたちだが、ミユの結界がなければ炎の余波を浴びていただろう。
丸古はまだスキルを発動させただけで攻撃はしていない。
丸古はカッペイと同じ拳闘士だが、その実力は遥か高みに位置している。
「はぁー、やっぱカッケェなぁ叔父さんは。俺も早くあんな風になりたいぜ」
カッペイは少年のようなキラキラした目で丸古を見る。
「カッペイさんならすぐになれますよ」
「そうかな?」
「はい」
子供を諭すようミユがカッペイに優しく語りかける。
丸古はリザードキングの方へ歩き出す。
リザードキングを守るように数匹のジェネラルが立ち塞がる。
「…邪魔だ」
丸古が拳を構え、振り抜く。
丸古の周囲の炎が拳圧と共にジェネラルたちへと襲いかかる。
ジェネラルたちは前面に盾を構え炎をしのごうとするも、あっという間に炎に呑み込まれる。
炎の勢いは収まることなくリザードキングに迫る。
リザードキングは咆哮をあげスキルを発動させる。
巨大な水流を発生させる。
本来なら周囲の水を巻き込み威力が倍増していたはずなのだが、今は逆に威力が弱まっている。
水流が炎とぶつかる。
炎の方が優勢で水流は徐々に押されていく。
やがて炎は水流を呑み込みリザードキングに到達する。
だが水流により威力が弱まった為、さほどダメージは与えられていない。
と、安堵しているリザードキングの目の前に丸古が。
「…終わりだ」
リザードキングの頭を掴むと、そのまま握り潰す。
リザードキングの身体がその場に倒れ、階層ボスとの戦闘が終わる。
「…先に進むぞ」
カッペイたちは次の階層へと進む。




