カワウソ対半魚人
海の中は透き通っていて、遠くまで見渡せる。
リードに繋がれたカッペイを先頭に一行は海中を進む。
「しばらくはそのまま真っ直ぐで行こう」
「カッペイさんそのまま真っ直ぐだそうです」
リードは従魔用のもので、ひもを通して伝達することができる。
桃井の指示をミユがカッペイに伝える。
通常ならば球体の維持と移動を桃井が行うのだが、今回はカッペイがいるため移動は牽引してもらうことにした。
「いやー、引っ張ってもらうの楽でいいね。これ維持しながら動かすの地味に面倒なんだよね」
負担の減った桃井は嬉しそうにしている。
面倒だといってはいるが、賢者である桃井にとっては大した苦労はなくただ本人が面倒臭がり屋なだけ。
「ふふ、なんだかお散歩しているみたいで楽しいですね」
「ねぇミユそろそろ交代してよ」
「まだ駄目です。もう少ししてから代わりますのでマヤは周囲を警戒でもしていて下さい」
「カッペイさんは気にしないでいいですよ。そのまま進んで下さい」
ミユとマヤのやり取りが気になったのか後ろを振り向くカッペイ。
ミユは気にしないよう伝える。
何事もなく進んでいくと、
「ん、そろそろお客さんがやってくる感じだね。カッペイ君も気付いてるかな」
桃井がモンスターが近づいて来ていることを察知する。
カッペイも同様に気付いているようだ。
「ちょっと行ってくる」
カッペイがそう合図すると、リードを外しモンスターがいる方向へ向かう。
カッペイが向かった先にいたのは半魚人の群れ。
外見は人のシルエットをしているが近づくと全身鱗で覆われており、魚の頭を持つモンスターだ。
手には銛を持ち、複数で連携をとり襲って来るため身動きの取りづらい水中では厄介な相手だ。
しかしコツメカワウソであるカッペイにとっては大した敵ではない。
カッペイは半魚人たちのところまで一気に泳ぐ。
そして一匹ずつ殴り倒していく。
地上と変わらず動けるため威力が半減することなく発揮される。
次々と半魚人が倒されていく。
周囲には頭のない死体が一匹また一匹と地上に浮かんでいく。
危なげなく半魚人を倒したカッペイはミユたちのところへ戻っていく。
その後も同様にカッペイが単独でモンスターを倒して進むこと一時間程、次の階層へ続く地点にたどり着く。
そこは神殿のような場所で周囲は空気に包まれており、呼吸ができる。
「カッペイ君のおかげで普段よりも早いペースでこれたよ」
桃井がカッペイに礼を言う。
カッペイがいない場合でも桃井であればここまでたどり着くのにさほど時間はかからない。
しかし移動戦闘も行わなければならないので、かかる負担は大きい。
今回カッペイのおかげでかなり楽ができたので機嫌のいい桃井。
「カッペイさんお疲れ様でした。しばらくは休憩してて下さい」
ミユに抱き抱えられるカッペイ。
ミユの胸元が定位置になりつつある。
「それじゃあ次行こうか」
桃井が先を促す。
カッペイたちは神殿の中へ入っていった。




