顔合わせ
「なぁ、ホントにこの格好で行かないとダメか?」
「はい、ダメです」
Yシャツに蝶ネクタイとサスペンダー、短パンとおめかしした駄々をこねる少年が今のカッペイの姿だ。
せめて短パンはやめてほしいと固辞したものの、ミユと陸奥の圧に負け、どこに出ても恥ずかしくない美少年ができあがった。
つい先日二十歳になったばかりとは思えない姿にカッペイはどうしてこうなったと遠い目をしていた。
カッペイの予想では今頃は叔父のような漢らしい姿になっているはずだったのに、現実は非情で成長が止まったままだ。
母の弟である叔父を見てまだ成長の余地はあると諦めていないカッペイだが、父方の家系は皆カッペイと同じく幼い容姿のものが多い。
おそらくその血を濃く受け継ぐカッペイはこのままであろうと思われる。
カッペイたちは既に集合場所である一室に到着しており、マヤや他の冒険者を待っていた。
すると、
「やっほー、ミユとカッペイ君久しぶり!って、どしたのその格好?」
「ミユがここに来るならちゃんとした格好しろって」
「うん、似合ってるよ。特にその短パン。ポイント高いね」
そういうマヤの服装はパーカー姿とラフな格好だ。
「おいミユ、どういうことだ?マヤみたいな格好はダメなんじゃないのか?」
「はい、カッペイさんはダメです」
「なんで俺はダメなんだよ」
「だってカッペイさんはご自身の身だしなみに全く気を使わないじゃないですか。本当は普段からちゃんとして欲しいのですが、それは譲歩します。その代わりこういった場に赴く場合はしっかりして貰います」
ミユの言い分はカッペイにかなり譲歩したものであるし、現在天空橋家に世話になっている以上カッペイは強く出ることはできなかった。
本気で嫌であれば既に逃げ出しているはずなので、なんだかんだいってそこまで不満がある訳ではないと思われる。
「そういえば他のメンバー誰が来るかマヤは知ってるか?」
「うん知ってるけど秘密。来るまでのお楽しみ」
「まぁ、大方の予想はつきますけど」
「ミユ、わかるのか?」
「ふふっ秘密です」
マヤとミユにはぐらかされるカッペイ。
もやもやしながら待っていると、
「おや、もう揃ってるね」
「…お前がのんびりしてるからだろう」
二人の男性が入ってくる。
「久しぶりだね、ミユちゃんカッペイ君。マヤちゃんはこの前会ったかな」
一人は賢者こと桃井。そしてもう一人は、
「…久しぶりだな、カッペイ」
「叔父さん!」
桃井よりも大きく筋肉隆々なアクションスターのような男、丸古。
彼はカッペイの叔父であり、世間では「キング」と呼ばれている冒険者だ。
このメンバーが今回招集された冒険者全員となる。
その後、係の者がやってきて今回の依頼についての説明が始まる。
「…以上が今回の依頼の内容となります。何か質問はございますか?」
「あの、このメンバーなら俺は必要ないのでは?」
今回呼ばれたことに疑問を持つカッペイが質問する。
今回のメンバーの中でカッペイは足手まといになりかねない。
勇者、聖女、賢者、キング。
冒険者としてそれなりの実力があるカッペイでも、国内上位のメンバーに名を連ねるのは流石に気が引けた。
「いえ、今回向かってもらうダンジョンにはカッペイ様のお力が必要だと判断致しました」
「あー、確かにカッペイ君にピッタリのダンジョンだよね」
「私はカッペイさんと一緒がいいです」
「僕たちも問題ないよ。ね、丸古?」
「…ああ」
ミユたち他のメンバーもカッペイの参加に賛成の様子。
「皆様、宜しくお願い致します」
係の者が退室する。
勇者以下上位冒険者による海底ダンジョンの攻略。
それが今回の依頼内容だった。




