指名依頼
呪いが解けなんだかんだで半年が経つが、未だにミユの所で居候をしているカッペイ。
カッペイに対する世間のほとぼりは冷め、既に自由に外出していたりする。
ここから出て元々住んでいた場所に戻ってもいいのだが、ミユと陸奥の好意に甘えダラダラと長居していた。
以前の暮らしはダンジョンと家の往復だけだったので、正直どこで暮らしても大差ない。
むしろ以前よりも快適に過ごせるため、追い出されない限りは居座ろうと思っていた。
来た当初は塩対応だった陸奥も今では心なしかカッペイに対する対応が良くなった気がする。
ミユはというと呪いが解けて以降、事あるごとにカッペイの世話を焼きたがる以外は今までと変わらない。
そんなある日、
「ミユ様とカッペイ様に指名依頼が届いております」
「ミユだけじゃなくて俺も?」
「はい、ミユ様とカッペイ様のお二人宛に届いております」
ミユは聖女のため、このように度々指名依頼が届く。
しかしカッペイには今までそういった指名依頼はなく、今回がはじめてだった。
「陸奥さん、依頼の内容はどんなものでしょうか?私だけでなくカッペイさんも一緒でなければならないものなんですよね?」
「内容はとあるダンジョンの攻略です。カッペイ様にはミユ様の護衛として同行をして欲しいとのことです」
「私達の他にも冒険者の方はいるのですよね?」
「はい、マヤ様の他、数名同行するとのことです。詳しくは顔合わせの時に説明があるそうです」
「マヤがいるのでしたら問題ないですね。カッペイさんも参加でよろしいでしょうか?」
「問題ないけどこれって断れないやつだろ?」
「はい、これは政府からの指名依頼となりますので拒否権はないかと」
「はぁ~、堅苦しいの苦手なんだよな」
「政府の方がいらっしゃるのは最初の説明だけですよ。ダンジョンに入ってしまえば気楽なものです」
「そういうものなの?」
「マヤもいますし、カッペイさんは一緒にいるだけで問題ないです。ちょっと遠出のお散歩みたいなものです」
「俺一応護衛なんだけど…」
「あっ、ちょうどいい機会です。カッペイさんの正装を用意しましょう。せっかく政府の方と会うのですからジャージは駄目ですよ。陸奥さんお願いします」
「かしこまりました、すぐに準備致します」
ミユと陸奥が外出の支度をはじめる。
当の本人カッペイは蚊帳の外だ。
カッペイはダンジョン以外のことは無頓着なのでジャージなどのラフな服装を着ることが多い。
ミユと陸奥はそれを勿体ないと感じていた。
本人は自覚していないが、カッペイは美少年。
気の抜けた姿も悪くないが、着飾ってこそ素材は輝く。
いかにしてカッペイをコーディネートするか、その機会を伺っていた。
今回得たチャンスを逃すまいと、指名依頼よりもカッペイの服選びに熱中する二人。
カッペイはそんな二人の圧に負け、天空橋家御用達の店にて着せ替え人形と化していた。




