カワウソ対魔人
魔人はタキシードで身を包み、ヤギの頭に背中にはコウモリの羽と、悪魔らしい風貌をしていた。
カッペイたちは魔人を確認した瞬間、すぐに動き出す。
「ミユ、手筈通りに」
「わかりました」
「迅雷!」
カッペイは間髪入れず魔人の目の前までいくとすぐさま攻撃を仕掛ける。
「あなた達の相手は私です。光よ」
ミユは中級悪魔たちを光の鎖で拘束し、光の剣で一匹ずつ倒していく。
カッペイたちの作戦はシンプルで、カッペイが魔人を引き付けその間にミユが取り巻きを倒していく。その後二人がかりで魔人と戦うという流れだ。
先に邪魔な取り巻きの中級悪魔を倒そうとして魔人を放って置くと強力な魔法を使ってくる。なのでそれを防ぐ必要がある。
魔人の足止めするだけならカッペイ一人でも問題なく対応できる。
「これで最後です。早くカッペイさんの援護を」
ミユは取り巻きの悪魔を倒すと時間の掛かる高威力の魔法の準備に取り掛かる。
カッペイは魔人と近接戦を続けている。
距離を置くと魔法が飛んでくるので離されないよう食らいつく。
「練気、赤!紅蓮!」
「轟雷!」
次々と属性を纏った攻撃を繰り出すが、魔人には効果が薄い。
「クソッ、あんま効いてないな」
魔人の攻撃を躱しながらボヤくカッペイ。
わかっていたことだが、実際に自分の攻撃が効いていないのを目の当たりにして少しショックを受けていた。
魔人の攻撃で気を付けるべきなのは遠距離魔法で、距離を置かなければそこまで脅威ではない。
近接戦は格闘主体になるために拳闘士のカッペイの方が有利なのだが、魔人は聖属性以外の耐久値が高くカッペイでも有効打が打てない。
カッペイと魔人の戦いは膠着状態のまましばらく続く。
「カッペイさん、お待たせしました!」
ミユの頭上には巨大な複数の光の剣が魔人に剣先を向けていた。
「よっしゃあ!」
カッペイは背中のリュックから二本の短剣を取り出す。
「ここで大人しくしてな!」
二本の短剣を魔人の両足に刺すと、魔人は膝をつきその場に倒れ込む。
この短剣はミユが聖属性を付与したもので、魔人の動きを一時的に封じる為に用意したものだ。
「2色、混合!赤、黄色!」
魔人から距離を置き、ミユと正反対の場所に移動したカッペイは切り札を使う。
炎と雷が混じり合いカッペイの周囲に轟音が響く。
2属性の混合技。
異なる属性を合わせるこの技は魔力の消費が激しく、今のカッペイでは使用後に動けなくなるほど扱いの難しいものだ。
しかしその威力は絶大でカッペイが持ちうる現状の技の中でも一番の威力を誇る。
「いくぞミユ!」
「はい!」
カッペイとミユは息を合わせ攻撃を仕掛ける。
光の剣と炎と雷が魔人へと直撃する。
轟音とともに砂煙が周囲を包む。




