魔人
桃井が去ってから、
「カッペイ様申し訳ございませんでした」
「私からも謝らせて下さい」
陸奥とミユが謝罪する。
「別に謝らなくていいって。だって桃さんに言われるまで知らなかったんだろ?」
ノロワレの聖女がダンジョンに潜るとモンスターのレベルがあがる。
これについて確証がある段階まで調べたのはおそらく桃井が初めてだろう。
ミユと陸奥はそのことを知らなかったとはいえカッペイを巻き込んでしまったことを謝罪したのだが、カッペイは気にしていなかった。
「しかし、それによりカッペイ様に余計な負担を強いることになりました」
「カッペイさんがよろしければ今からでもパーティを解消することもできます」
だが二人はカッペイにパーティの解消を勧める。
その理由は、
「次の階層ボスは中級の悪魔が出ます。カッペイ様とミユ様なら問題ないと思いますが、先程の桃井様の話の通りなら上級の悪魔が出てくる可能性が高いです」
「上級なら今の私でも対応できますが、もしそれ以上が出てきた場合果たして対応できるかどうか…」
試練の門最後の階層ボスは中級悪魔。仮に上級悪魔が出ても聖女であるミユなら対応可能だ。
しかし危惧しているのはそれ以上の存在が現れること。
魔人。
災害級モンスターとして認定されており、それに対処できる冒険者は勇者と聖女以外では極一部のみとされている。
「何度か魔人を倒したことはありますが、マヤといる時だけです。正直私だけで相手できるか…」
「俺は戦力外って訳か」
「いえ、決して足手まといと言いたいのではありません。カッペイさんの実力は魔人にも通用すると思います。ただ」
「魔人を消滅させる為の決定打がカッペイ様とミユ様には足りません」
魔人を消滅させるには、高位の聖属性攻撃か高火力の攻撃が必要だ。
ミユの攻撃だけでは火力が足りなく、魔人と戦う時は勇者であるマヤがフィニッシャーだった。
通常のモンスター相手なら十分倒せるだけの火力があるカッペイだが、魔人には聖属性以外の耐性が高く、倒しきれない可能性が高かった。
そんなリスクをカッペイに強いることをミユはしたくなかった。
「なぁ、要はダンジョンがミユにビビってるってことだろ?」
「え?」
「だってそうだろ。普通ダンジョンって余程の事がない限りモンスターが強くなったりしないだろ?」
ダンジョンは特殊な場合を除き、滅多なことでモンスターのレベルが上がったりしない。
「だからミユがビビる必要はねぇよ。あっちがビビってるってことは負けるかもしれないって思ってるんだろ。それにさ俺がついてる」
「まぁ確かに勇者よりは頼りないかもしれないけど、これまでやって来たんだ。最後まで一緒に行こうぜ!」
「はい!よろしくお願いします」
カッペイたちは改めてダンジョン攻略の作戦会議をはじめる。




