賢者
リヴァイアサンとの戦いから数日、カッペイたちの元に珍しい客が来ていた。
「久しぶりだね、ミユちゃんカッペイ君。二人の配信いつも見てるよ」
「お久しぶりです桃井さん」
「桃さん久しぶりです」
カッペイたちの前にいたのは、ブロンドヘアで中性的な顔立ち、180センチ以上の長身の男。
海外の映画俳優のようなこの男の名は桃井。
世間では彼を「賢者」と呼ぶ。
「それにしても突然どうしたんです?まだ攻略終わってないのに来るだなんて桃さんらしくない」
「はは、ちょっと気になることがあってね」
「桃井さん、気になることとは?」
桃井は極度の面倒くさがり屋で、滅多なことでは出歩かない。
そんな男がここに来たということは何かあるのだろうとカッペイたちは身構えていた。
「この前の配信のことなんだけどね」
桃井は元ノロワレで「試練の門」の攻略者の一人だ。
カッペイたちの先輩にあたり、数少ない攻略情報のいくつかは桃井からもたらされたものもある。
「僕たちが海のエリアを攻略した時はリヴァイアサンなんて出なかったんだよ」
当時の桃井が攻略した際に出てきたのはクラーケンだったそうだ。
攻略者によってエリアやモンスターの種類が違うことはあるらしいが、リヴァイアサンのような上位種が出てくる例はほとんどないそうだ。
「僕たちの時は普通だったんだ。で、カッペイ君たちと違いは何かなって調べてみたんだけど」
実力でいえばカッペイとミユよりも当時の桃井たちの方が上だ。
なのにカッペイたちの方に強力なモンスターが現れた。
桃井は数少ない過去の事例を探し出して共通点を見つけた。
「どうやらミユちゃんのジョブが鍵みたいなんだよね」
「私、ですか」
「そう。過去の攻略で難易度があがった時、ノロワレのジョブに必ず聖女がいたんだよ」
桃井の調べによると、過去ノロワレの冒険者に聖女がいた場合のみダンジョンの難易度があがったらしい。
これは試練の門だけでなく解呪の門でも同様に起こった。
「どうやら聖女はノロワレになる確率が他の冒険者よりも高いっぽいんだよ。更に高確率でダンジョンの難易度もあがりやすい」
「あくまで僕の仮説なんだけど、ダンジョンにとって聖女は都合が悪いのかもしれないね」
「ダンジョンの意思ですか…」
ダンジョンには意思があると言われているが、実際のところはよくわかっていない。
ダンジョンと対話できたものがこれまでいないからだ。
なので何故聖女がダンジョンにとって都合が悪いのか、その理由まではわからなかった。
「とにかく僕が言いたかったのは、次の攻略は今まで以上に気を付けた方がいいっていう忠告かな」




