泡沫の夢
マヤとの模擬戦の翌日。
カッペイは朝のトレーニングを行えない程消耗していた。
マヤとの模擬戦はその後マヤにスキルを使わせることに成功したが、テンションの上がったマヤによりボコボコにやられたカッペイ。
瀕死状態だったがミユの魔法により全快はしたものの、精神と体力は回復したりはしない。
その為朝食の時間になってもカッペイはベッドに潜ったままだった。
しばらくすると、
「失礼します。カッペイさん、朝食の時間ですよ」
ミユの声がする。
半起き状態のカッペイが顔をあげるとそこには見知らぬ美少女がいた。
マヤに似ているが彼女ではない。
顔はそっくりだが、マヤより髪が長いし背も少し低い。
「もしかしてミユか?」
「はい、おはようございますカッペイさん」
まだ頭が回っていないカッペイはミユに連れられ朝食のため移動する。
「んー、俺はまだ寝ぼけてるのかな?ミユが人に見えるんだけど」
「夢ではありませんカッペイ様。こちらの美少女は正真正銘ミユ様でございます」
朝食を取りながら詳しく話を聞くとどうやらミユはとあるアイテムによって一時的に元の姿に戻っているらしい。
カッペイはそんなアイテムを聞いたこともないが、特定のダンジョンの奥深くにいるモンスターから低ドロップする激レアアイテムの為、その存在は極一部にしか知られていなかった。
先日マヤがやってきた一番の目的はこのアイテムをミユに渡す為だったのだ。
アイテム『泡沫の夢』
ミユがノロワレになってから数ヶ月の間、マヤはずっとダンジョンに潜りこのアイテムを探していたらしい。
カッペイとの模擬戦のあと、ミユにアイテムを渡したマヤはすぐに帰っていった。
アイテム探しの間全ての仕事を休止していたので、溜まっている依頼を消化するまでまたダンジョン漬けになるそうだ。
「マヤにその姿見せなくて良かったのか?」
「ええ、また来る頃には呪いは解けてるだろうから問題ないって言ってました」
「カッペイ様には是非頑張って欲しいと仰ってました」
カッペイとミユがパーティを組んだことをマヤが知ったのはつい最近のことだ。
アイテムを見つけるまでほぼ毎日ダンジョンに潜っていたので、外界の情報は一切入ってこなかった。
アイテムを手に入れ一段落した頃にようやくカッペイのことを知ったのだ。
マヤは早々に陸奥から詳細を聞き、配信を見てカッペイのことを見定めることに決めた。
そして模擬戦をした結果、ミユを任せるに値すると認め帰っていった。
「カッペイさん、今日の朝食どうでしたか?」
「ん?いつも通りおいしいけどどうして?」
「今日の朝食はミユ様が用意したのですよ」
頬を赤らめるミユ。
「それで今日はどうする?その姿でいられるの今日だけなんだろ?」
アイテムの効果は一日のみ。
僅かな時間とはいえやりたいことはあるだろう。
「カッペイさんに手伝って欲しいことがあるのですがよろしいでしょうか?」
「ああ構わない。身体を少し休めないといけないし」
カッペイは人に戻ったミユと過ごすことになった。




