勇者襲来
30層を攻略してから数日。
朝のトレーニングを終えたカッペイが朝食に向かうと、
「はいミユ、あ~ん」
「やめてくださいマヤ。自分で食べられますから」
ミユが見知らぬ美少女に抱きかかえられていた。
「ミユ、その人誰?」
「おっ、キミが話題のカワウソ君か。ボクは天空橋マヤ。ミユのお姉ちゃんだよ、よろしくね」
抱えていたミユを解放するとカッペイの元へやってきたと思えば、
「クンクン、思ったより生臭くないね。どれどれ手触りはどうかな?うん意外とサラサラしてるね。顔はちょっと怖いけど、まぁ中々悪くないね」
カッペイの臭いを嗅いだりペタペタ触りだした。
「ちょっとマヤ、いきなり失礼ですよ。すみませんカッペイさん」
「えー、いいじゃん減るもんじゃないし」
カッペイを抱き抱えるとそのままテーブルに向かうマヤ。
オオカワウソであるカッペイは150センチあるのだが軽々と運んでいる。
カッペイは抗うことなく流れに身を任せていた。こういうマイペースな手合には抵抗するだけ無駄だ。心を無にしていた。
「キミ器用に食べるんだね。椅子にもちゃんと座ってるし賢いね、えらいえらい」
椅子に座りフォークを使って食事しているカッペイの頭を撫でるマヤ。
「マヤ、カッペイさんはペットじゃないんですよやめなさい」
普段おしとやかなミユが声を荒らげていた。
騒がしい朝食が終わり改めて自己紹介をするマヤ。
「改めまして、ボクは天空橋マヤ。ミユの双子の姉で勇者やってます」
天空橋マヤと天空橋ミユ、彼女たちがかの有名な勇者と聖女だった。
勇者と聖女。その名は世間に広く知れ渡っているが、その正体は謎に包まれていた。
表に姿を現すことはほとんどなく、数少ない目撃例も全身フルプレートとベールで顔が隠された状態なので極一部の関係者にしか素顔は知られていない。
カッペイはノロワレになる以前から直接の交流はなかったものの二人の正体を知っていたので、ノロワレとなったミユのパーティメンバーとして選ばれた。
「こないだの配信見たよ、ミユ大活躍だったね。ダンジョン配信って今まで見たことなかったけど面白いね、ボクもやってみようかな」
「マヤ様、おそらく許可が降りないかと思います。それにマヤ様に同行できる冒険者がおりません」
「そうなの?残念」
勇者であるマヤが攻略するダンジョンは高難易度のものばかり。同行できる実力の冒険者は少ない上、正体を隠している以上無駄な露出は許可されないだろう。
「そういえばマヤはどうしてここに来たのですか?」
「んー、久々にミユに会いたかったのもあるけど、一番の目的はねカッペイ君、キミだよ」
「ん、俺?」
「ねぇ、ボクとちょっと戦おうよ」




