1話 欲のままに望む
「お前の望みはなんだ?何が欲しい?」
誰かが僕に尋ねてる…おかしいな、ここにいるのは僕だけなのに…
「ねぇの?今なら叶うんだぜ。一言言えばいいんだぜ」
まだ聞こえる。夢じゃないのか?願い…望み…
「お前は俺と同じ欲がねぇのか?俺から見ればお前は欲があるように見えるんだけどな」
欲…僕は何が欲しいんだ?欲していいのか?
「欲していいんだよ。俺が叶えてやるし責任取るぜ」
責任って…まだ言ってないのに。欲しい物…例えば、なんだろ?
「例えば?そうだなー。お前をこの部屋から出してあげるとか?」
ここから?僕を?なんで?僕はここから出たいと思ってるの?
「あれ?違ぇの?てっきりここから出たいんかと。俺の勘違い?だってお前ずっと外見てるんだぜ。死んだ魚みたいな目して」
ここから出たい?僕が?なんで?だってここにはお父さんもお母さんもいる…あれ?僕にお父さんとお母さんとか居たっけ?
「下のいる男と女はお前の親じゃねぇの?他人か?」
親…そういえば、僕はあの人達の事どう思ってたんだっけ?あの人達は僕のなんだっけ?
「親じゃねぇんなら他人でよくね?なんでお前は他人のアイツらと暮らしてんの?」
なんで?なんでかな?僕の本当の両親は?
「俺に聞かれても知らんよ。俺とお前は今日初めて会っただろ」
僕は君を知らないし姿見てないよ。
「お前が見てなくても俺はお前を見てる。今もお前を見てる。そしてお前の望みを聞いている」
なんで僕の望みを聞くの?
「んあ?そーだなー。お前の望みは叶えてそのお礼に俺の望みを叶えさせる。俺の欲を満たせ」
欲を満たす…何をするの?まさか変な事?
「何想像してんだよ。それは俺も分かんねぇ。とりあえずたまたま見つけたお前を見ると欲が籠った目してたからな。それ叶えてやるからお前も俺の欲を満たせ」
僕の望みを叶える理由が理由になってないよ。
「どうするんだよ。本音言えば?ここから出たいってよ」
だから、ここには両親が
「他人なんだろ。じゃあ仮にアイツらをお前の親とする。なんでお前はそんな死んだ魚みたいな目してんだよ。なんでそんなに息苦しそうにしてんだよ。なんで助けを求めるような目してんだよ。」
死んだ魚のような目と助けを求めるような目、どっちの目してるの?
「両方、かな」
両方なんだ…いつからしてるんだろう。気づかなかったな…誰も気づかなかったのかな?
「見て見ぬふりしてたんだよ。お前の親は権力を奮っている。お前を道具として見てる。欲のままにな。俺から見たらそう見える」
やっぱり僕は…
「道具にされてるのは自覚あったんだな」
そりゃあね。こんな身体にされて、僕の話聞いてくれなかったし…欲しい物も…願いも…もう疲れた…言いなりも、話しかけられるのも。話しかけるなんてただの暴言を聞かされるだけ。殴られるのも、切りつけられるのも。そういえば、今度はどこかの社長の相手にさせられるんだっけ?僕はこんな身体だから。性欲の満たしになるんだって。それで、僕を使って媚びを売りまた会社を大きくするんだよ。それで僕は次に何されるのかな?もう嫌だよ…こんな生活…こんな事で人生終わるんなら!
「もういい。お前の心は分かった。願いもな。」
えっ?
「言ってんだろ。俺が叶える。そんでお前は俺の欲を満たせ」
君もアイツらと同じ…
「じゃねぇよ。分からんが、たぶん、もしそうなら力づくで連れてってるわ。さぁ早く言え。こう見えて俺時間ねぇの。何を望む」
僕は欲していいのかな?
「いい。俺が責任取る」
「欲を出せ。欲をままに。お前の望みは?」
望み、僕の望みは…
「僕をここから自由にして!!僕を連れ出して!!」
「いいぜ。契約者の仰せのままに」
神城玲音は孤児院で今の両親に買われ今日まで厳しい教育の中生きてきた。幼い頃こらありとあらゆる英才教育を受けさせられ人に関わる事はほぼなかった。両親による厳しい教育、言いつけが玲音を家という名の牢獄に縛り自由を奪っていた。1度、玲音は言いつけを守らず家を出た。唯一の友人に連れられ自由を味わった。それは自由を奪われていた玲音にとって初めての人と関わり、幸せで自由な時間の共有でもあった。だが、それはあまりにも短い時間だった。両親に見つかりまた牢獄に戻された。友人はどうなったのかは聞かされなかった。部屋に閉じ込められ暴力を受けた。家が牢獄なら躾は拷問。毎日、毎日繰り返される変わらない日々。勉強、拷問、勉強、拷問。その日々がある日から変わった。それは玲音が12歳になった年。スケジュールに勉強と拷問の次に1つ増えたのだ。それは別会社の社長の性欲処理だった。父の会社との契約、企業の拡大の為である。信じ難いが玲音は無性だった。生まれつきらしい。この世界には人間の無性の誕生の記録はない。突然変異なのか分からない。そんな無性の玲音は性欲処理にはぴったりだった。どんなに犯しても子供は生まれない、罪悪感がない、責任は不要。人権がないな…玲音は思った。それから3年、勉強、拷問、性欲処理の日々。玲音は精神が崩壊していた。助けを求めても誰も気づかない、気付かないふり。分かっていた、分かっていても望んでいた。いつか自分を自由にしてくれる人が来るかもしれない、自由になる日が来るかもしれないと信じていた…
「僕をここから自由にして!!僕を連れ出して!!」
気づいたらそう叫んでいた。今まで誰と話してたんだろう。玲音は冷静になり頭を動かした。
「なんで?なんでこんな事?誰と話してたの?」
状況が掴めない。玲音は頭を抱えた。
「そもそも本当に僕は望んでいるの?」
呟いた。その時…
「玲音!何を騒いでいる!なんて叫んだ!」
ドンドンと鈍く大きな音が部屋中に響く。ドアを叩く音。叩いているのは父親だろうか
「こんな遅くに何を叫んでいる!自由にしてだ?私達がお前を不自由にしてるとでも言うのか!」
「違う!違います!ごめんなさい。僕は…」
「言い訳はいい!」
ドアが開けられた。大柄な男が入ってきた。玲音の父親だ。玲音を鋭い目で睨みつける。玲音は恐怖で動けない。
「なんだその目は!親に対する目か!」
怒号が響く。また拷問をされる。今度こそ殺されるのかな?怖い、怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い…助けて…
「お前ってあんな大きな声出せたんだな。さっき話した時ももうちょい大きい声で良かったのにな」
声がした。どこから?見渡してもいるのは玲音と父親のみ
「なんの騒ぎなの!玲音またあなた何かしたの?」
母親が来た。母親も鋭い目で玲音を睨む。
「この部屋に誰かいるのか!ここは3階だぞ!玲音!お前が誰か連れ込んだのか!」
「ち、違う!そんな事!」
「お前という奴は!親に対して口答えするのか!」
父親が玲音の顔に向かって拳を振るう。玲音が身構えようとした
「おいおい実の子じゃなくても子供に手出すのかよ。この世界の親ってやつは」
いつの間にか父親と玲音の間に誰かがいた。紳士服の上にパーカーを着た青年だった。青年が玲音を見つめていた。
「oh......レオン、いくら無性でもその体勢は目に毒だぜ。パンツが丸見え。白い肌して足細いから生足だとかなりエロい」
誰?ていうかどこ見てんだ
「誰?」
「もう忘れたか?さっきまで話してただろ?」
「えっ?」
さっき話してた…確かに望みを叫ぶまで声は聞こえた。誰かと話してた。
「本当にいたの?」
「いたいた〜。入るタイミング見逃してよ、お前なんか殴られそうだったからなー。契約者に傷なんか着いたらどうするんだよ。俺泣くぞ」
契約者?何言っているだろうかこの青年は
「誰だ!玲音!お前部屋に男を連れ込んでいたのか!明日はあの製菓会社の社長と」
「本当に子供を性欲処理にしてんだな。この世界の人間も欲まみれだな……羨ましいくらいだ」
最後は小声でなんて言ったか聞こえなかった。
「とりあえず、この腕離していいか?疲れたんだけど」
青年が父親を軽々と腕を掴んでいる片手で持ち上げ壁に投げ飛ばした。ドゴンと鈍い音が響く。その後にキャー!と悲鳴が響く。
「あなた!玲音!その人は誰!?知り合いなの!?」
母親が叫ぶ。睨みつけている目はいっそ鋭くなる。
「よし、用は済んだ。レオン、行こうぜ!」
と知らない間に横抱きにされてた。言わばお姫様抱っこ。そのまま窓の方へ進む。
「窓から降りるの!?」
「ドアはお前の親父と母親が邪魔で通れねぇだろ。窓しかなくね?」
玲音はドアの方を見る。確かにドアの前には倒れた父親と父親を心配する母親、たしかに、邪魔だ
ドアの方を見る玲音をみて青年はニヤニヤして言った。
「あ、お前今アイツらの事、邪魔って思ったな!やっぱり親って思ってなかったんだな!ならいっそ俺と行こうぜ!俺ならお前を傷付けない」
最後の言葉は真剣な顔をして、声も明るみがなかった。そして青年は両親の方を睨む。両親の目よりも暗く、恨みに満ちたような目。殺意の籠った目だ。その目を見て両親は震える。
「それをどこへ連れて行く気だ!」
震えながら父親が問う。母親は涙を流していた。
「それは俺達の私物だ!そいつが入れば会社は安定。大企業とも取引が出来る。それを返せ!」
「(やっぱり僕は、道具だったか…ならもう…)」
玲音は失望した。いや、初めて会った時から失望していたかもしれない。こんな家にいるくらいならいっそ彼に連れて行かれた方がいい。
「俺の欲を満たせ」何をすればいいのかな?身体?従者?玲音は考える。
「さっきから私物だのそれだの。レオンは人間って知ってる?レオンが人間じゃねぇならお前ら欲に溺れた人間は何?欲を満たされなかったんだぞレオンは」
「お前はそれの何が分かる!」
「レオンと呼べ!それじゃねぇ!」
殺意の籠った怒号が響く。青年の目はいっそ怒りと殺意に満ちる。
「よくも俺の契約者を汚したな。この落とし前はちっきり付けさせねぇとだな。レオンに面じてお前らは殺さねぇでいようと思ったんだがな。我慢できねぇや」
そう言って玲音を下ろした。そして、「アッ!」
トンと鈍い音と痛みがした。首筋を叩かれた。そのまま玲音は気絶した。青年は玲音を支え壁に寄せた。そして、両親の方を見た。
「ここからはR-18だからな。あ、決してエロい事じゃないぜ。グロい方だ」
青年が両親に殺意に満ちた笑顔を向ける
「レオンを犯した奴は玲音に会う前に殺したからなー。あ、明日の相手のおっさんもな。さて、お前らはどうやって殺るかな〜」
青年がボキボキと指を鳴らす
「いい感じに悲鳴上げろよ」
1話 欲のままに望む