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「嫌ですっ! 別れませんっ! 絶対に別れませんからっ!」


「待て、フランジール! 早まるなっ」


「うるさいっ! あなたが私を追い詰めているんですよ!」


「とにかく、話を聞いてくれっ」


「話っ!? 私とあなたに身分の差があるから婚約は解消って話でしょう!?」


「……そうだ」


「なら、もう終わりなんですっ。私はこの崖から飛び降りるしかないんですっ」


「どうしてそうなる!? たかが、婚約破棄くらいでそこまでしなくてもいいだろうっ」


「"たかが"? 全然"たかが"なんかではありませんよっ!」


「よせ、フランジール。それ以上、奥に行くなっ」


「あなたに捨てられることが私にとって、どれだけ辛いことかわからないんですか!?」


「わからないわけないだろうっ。僕だって苦しいし、辛い」


「なら、どうして別れるんですか!? このまま結婚すれば2人とも幸せじゃないですか!!!」


「そう……だよな。それは僕だってそう思うさ」


「じゃあ……、どうして……?」


「泣くな、フランジール。僕らの身分の違いのせいだ」


「知りません。関係ないでしょう、あなたと私の身分差なんて」


「僕だって、そう思うよ。世の中がおかしいんだ」


「なら……、それならもう結婚……しましょうよ」


「ダメだ。それは君のお父様が許してくれない」


「……」


「君は上流貴族で、僕は下級貴族だ。君のお父様は僕の存在自体を認めていない」


「お、お父様も私たちの恋には関係ありませんっ」


「フランジール、現実を見るんだ。僕らは一緒になるべきじゃない。僕よりも優秀で素敵な男性ならいくらでもいる。そういう人間と君は結婚するべきなんだ」


「……」


「その方が君も君の家族も幸せになれる」


「嫌……ですよ」


「……」


「私は、あなたが好きなんですっ。あなたでなければダメなんですっ」


「……フランジール」


「どうしても結婚してくれないというのなら、私をこの崖から突き落としてください」


「な、何馬鹿なことを言ってるんだ!?」


「自分で飛び降りるよりも、そっちの方が救われる気がするんです。大好きなあなたの手で人生を終わらせてもらえるから」


「そんなことできるわけないだろうっ!」


「じゃあっ! じゃあ、どうすればいいんですか? あなたと一緒になれない人生なんて、無意味ですよ」


「そんなことはないよ、フランジール」


「……」


「僕らが別れても互いに幸せになれる道はきっといくらでもあるよ」


「いくらでも……?」


「そう、可能性は無限大だ」


「いくらでも、いくらでも、いくらでも? いくらでも? いくらでも?」


「フランジール……?」


「あなたは私以外の女性をいくらでも好きになれるということですか? いくらでも他の女を愛せるということですか?」


「い、いや。そういう意味ではないよっ」


「私にはそういう風に聞こえました」


「それは言葉の綾だよ」


「本当ですか?」


「本当だよ」


「本当なら私を崖から突き落としてください」


「どうしてそうなる!?」


「どんな理由でもいいんです。あなたと結婚できないのなら、あなたに殺されたいんです」


「落ち着け、フランジール。辛いのはわかるが、それはいけないよ」


「落ち着いてますっ。でも、ダメなんです……、あなたがいない未来を、あなたと一緒に歩めない人生を想像するだけで気が狂いそうになるんです」


「それは僕も同じだ。けれど、僕らはその苦しみを乗り越えないといけない」


「ラルフ……」


「わかってくれ。フランジール」


「……」


「……」


「ごめんなさいっ!」


「馬鹿っ!!!」


















「生きろよ、フランジール」


「ラルフ……?」


「さよならだ」


「ラルフーーーーーーーーっ!」

















「ーー」


「いやああああああああああああああああっ」

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