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救世の九日

 この世界には魔物は存在しない。


 正確には存在しないと思われていた。


 ゴブリンやオーク、巨人たちは空想上の生物だと思われていたのだ。


 だが、実際には魔物は存在した。後の世で〝戦獣〟と呼ばれることになる異形の悪魔どもは異世界から虎視眈々と人類を物色していたのだ。


 その戦獣どもをこちらの世界に呼び寄せてしまった理由はいくつか説がある。



 古代魔法文明の魔術師による召喚実験失敗説。

 魔王と呼ばれる存在が能動的に異世界の扉を開いた説。

 驕り高ぶった人類に対する神の鉄槌説。



 それらの説は説得力に満ちていたが、どれも決め手を欠いた。当の戦獣たちが黙して語らなかったからである。彼らは言葉を発せず、人類を殺戮する以外の意思を持たなかった。王が問うても、賢者が質問してもなにも語らなかったのである。


 戦獣は人類を抹消するかのように殺戮を繰り返す。


 当時、人類の総人口の七割が死んだそうだから、存亡の危機と言っても差し支えはないだろう。だが、人類は滅亡することはなかった。


 滅亡の淵に立たされた人類を救う存在があったからだ。


 そのものの名は神竜。


 天から使わされたとされる神の竜とその眷属たちが人類を救った。


 神にも等しい竜とその眷属たちは、億にまで達した戦獣をあっという間に駆逐した。


 その期間は僅か九日。


 後の歴史書に〝救世(ぐぜ)の九日〟と記される神聖な戦いによって神竜たちは人類を救ったのだ。


 古代の人々は神竜たちの活躍と慈悲に感謝し、畏敬の念を捧げ、神竜とその眷属たちを模した機械を作り上げた。それが竜型騎乗兵器(ドラグーン)の始まりであった。


 と歴史書には記載されている。


 以後、人類はドラグーンによって繁栄と平和のときを迎えるが、平和と退廃は表裏一体であった。種に対する脅威がなくなった人類はまず団結力を喪失させた。互いに戦争を始めたのだ。しかもただの戦争ではなく、人類の守護者たるドラグーンを使っての戦争を行ったのだ。


 最初は互いの思想の違いからの諍いだった。だが理由が髪や瞳の色、国境の問題に拡大すると収集がつかなくなった。


 人類を守るべく造られたドラグーンを使って、殲滅戦、民族浄化を始めると、あっという間に総人口を減らした。疫病や天変地異も重なったが、皮肉なことに戦獣が人類を滅亡させようとしたときよりも多くの人口を減らしたという。人類はその愚かな行動によって文明を衰退させ、魔法科学技術力も衰退させた。


 もはや人類はドラグーンを生産できないほどに落ちぶれてしまったのだ。



 そんな中、人類はさらに分裂し、マルセイユス帝国とそれ以外に別れ殺し合いを演じている。マルセイユス帝国に至っては人類の仇敵ともいうべき戦獣を使役していた。


 残った国々は古代魔法文明の遺跡を血眼になって探し、そこから僅かに発掘される竜型騎乗兵器(ドラグーン)を持って対抗していた。


 その滑稽な状況は三〇年以上継続されることになるが、終わりの兆しさえ見えない有様であった……。

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