100回目の死
その後、増援に駆けつけてくれたドラグーン兵団。彼らの増援はわずかばかり生き残っていた歩兵と竜機士たちには福音だった。
生き残ったものは勝利を確信し、士気を大いに高揚させた。
実際、二〇体のドラグーンが駆けつけると、戦局は一変した。
それまで戦獣側の一方的な殺戮ショウだった戦場の攻守が入れ替わったのだ。
次々と駆逐されていく戦獣たち。
それまでの苦戦が嘘のように戦獣たちを倒していった。
僕は、弾も尽き、武器もなくしたので、そのまま後退し、戦線を離れ、後方の基地へ向かった。
そして僕はそこで一〇一回目の死を迎えた。
その基地でとある女性に殺されたのだ。
彼女は増援に駆けつけてくれたドラグーンの騎乗者だった。
僕の乗っていたファブニール七〇二式の竜機士の妹であった。
前騎乗者もその妹も、とある名門貴族の一族だった。
兄であるレナークという男は、ファブニール七〇二式を駆り、戦場で数々の武勲を立ててきたらしい。
妹であるカレンはそのことを誇りに思い、兄を慕っていた。
兄がまた武勲を立てて戻ってきた。そう思い、帰還したファブニール七〇二式に駆け寄ったわけであるが、そこにあったのは大量の血液だった。
彼女はファブニール七〇二式のログ情報を調べると、兄の戦死を知り、途中で騎乗者が代わったことに気がついた。
短気な彼女はその騎乗者が兄を殺し、ドラグーンを奪ったのだと誤解した。
いや、そう思い込みたかったようだ。
無敵の兄が戦獣におくれをとるわけなどない。
不覚をとるわけなどない。
そういうシナリオが彼女には必要だったのだろう。そうでなければならなかったのだろう。
彼女は明らかに精神に異常をきたしていた。
カレンは後方基地の休憩室で休み、尋問を受けている僕の前にやってくると、そのまま腰のホルスターから回転式拳銃を取り出し、僕を射殺した。
僕の腹部に二発、銃弾を撃ち込んだ。
その後、自分のこめかみに拳銃を当てると、彼女は引き金を引いた。
「……兄上様、今、貴方の御許に向かいます」
彼女はそう言い残すと、僕よりも数分早くあの世へ旅立った。
僕はその光景を見ながら嘆いた。心の中で。
(……くそ、またペンギンの冗談を聞かされないといけないのか。次に復活したら、この娘から逃げるか、もしくは説得しないと)
そう思いながら一〇一回目の人生を待った。
だが、一〇一回目の復活は前回とは違うことに気がつく。
前回まではヨアヒムの詰まらない冗談を聞かされるシーンから始まったが、今回の復活は、後方基地の休憩室から始まった。
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