blue. 05(これから)
*
夕方、駅前のホテルに電話。宿泊状況と天候の具合を訊ねる(大丈夫です空いてます雪も落ち着いてます)。新幹線、オンラインで予約状況のチェック(ガラ空き)。
本当に見たいのか?(自問自答)行けるのか?(自問自答)行きたいのか?
水曜に連絡がなければ返答は木曜以降。木曜に連絡がなければ金曜になるそして週末はどこも動かない。金曜の連絡・待つこともない。月曜まで何も出来ない/しなくていい。
月曜までにどうにかすることもない。
週末の天気予報:晴れ。現地到着時間と駅前発観光バス・時刻とルート・再確認。夜中に(オンライン)新幹線及びホテルの予約。荷造り・持ち物一覧(常備薬・衛生用品・マスク他)詰めてメモ書き(一行ずつ)線で消す。溝の深い靴:忘れない。
おさらい:現地入り(荷物)預けて昼にシャガール。美術館滞在時間:約一時間半。観光バス・逆ルート〈棟方志功記念館〉再びバスに乗り夕方過ぎホテル・チェックイン。
三年前からの展示三月までの展示・シャガールの絵。
目覚まし:アラーム・セット。
行くよ。
*
新幹線は飛ぶように進む(ハヤブサは古代エジプトの神)。窓の外を流れる風景少しずつ白く雪が混じり雪に覆われる。車両前方・電光掲示板。独自の非常事態宣言。ニュース/ニュース/ニュース。追い掛けてくる。ぼくは外を見る。北上。初めての雪国。
列車を降りて駅を出る。晴れ渡った空と雪布団。着替えを入れた荷物はコインロッカー(身軽になって)バスを待つ。駅前のロータリー:除雪され黒いアスファルトと白い雪のコントラスト。想像よりも寒くない(雪国)。期待以上に眩しい(北国)。
慌てて撮った写真を相方に飛ばす。(転んでも手だけは守れ)返信に口元がほころぶ。
本当に来てしまったのだ。
バスに乗って美術館まで十分と少し(アナウンス:路面状況により予定より遅れております)。バス停から建物までの道は雪で埋もれ踏み固められ(雪道)こんな風景(見たことがない)。
青い空、白い雪。
雪原の向こう薄墨の森を後ろに白い建物(美術館)青森県立美術館。
見るもの・感じるもの、全てが・眩しい。
雪を踏む。慣れぬ足下、息が上がる。空の青と雪の白。光の反射。もうすぐ会える建物の中絵があるシャガールの絵がある。
館内に(無彩色)ねぶた(門松)。手指の消毒・検温、チケットの購入 (マスク)上手く伝えられない(興奮)。
矢印に従って(白い)館内を歩いて角を曲がるそれは(何度も見た)写真で見た光景そのまま床に(カラフル)プラスチックの切り株型スツール(ランダム)置かれた巨大な(四角い)ホールの壁面に吊るされた(巨大な)背景画。
四枚の、
──シャガールを見たいわ、……
棒のように突っ立って見上げる。
春の夜明け、はずむ夏。
煌めきの秋、冬と昏冥の凍空。
物語は、しあわせに幕を開け、ふしあわせな幕を閉ざす。
(出会い、育み、嫉妬、喪失)
──あのシャガールよ。……
きみの声が聞こえる。絵に囲まれる空気が止まる音が消える言葉が溶ける。
(世界には素敵なものがたっくさんあるの)
きみはいなくなりそして
シャガールだけが残された。
ぼくは絵の中で立ちすくみ、それでも
絵を好きでいて良かった思ったそして
これからも描いていけると思った。
(了)