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最強傭兵団活動録:異世界編  作者: 怪物mercury
異世界戦争《攻戦》
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26、セーイの笑顔のない再会

最近、アクセス数もユニークも目減りしていて悲しんでいる怪物mercuryです……

よろしければですね?

一つだけでも、そっと星を置いて行ってくれると嬉しいです。

 開戦は急だった。俺が焚火を守っているとき、突然叫び声が聞こえてきて、そちらを見ると何かが落下し、何かが飛んで行った。


 それだけでも、きつい衝撃波は飛んできていたし、何が起きているのか、何となく予想できていた。

おそらく、敵襲。


 それも、かなりの力を持つ相手だろう。だからこそ出し惜しみし、すぐに撤退したのだと直感する。


 テントから出てきた隊長さんが言った。


「敵襲、しかも奇襲だ。

だが、ウーノ様がしのいでくださったそうだ。おかげで今、敵陣は混乱のさなかにある。よって、すぐに戦えるように、装備を整えておけとのことだ。」


 俺たち以外の兵隊はみな震えていた。これは、ソリアに聞いた話だが、オーディンでは、末端でもその半数は職業軍人で、個人個人の戦闘力が高いらしい。一方、ユミルやフェンリルでは戦争の時以外はみな農民が本職で、職業軍人なのは中間管理職まで。


 そのうえ、中間管理職は直接戦うことはしないから、結果、普段から栄養状態がさほど良くなく、比較的筋力も技術も劣る農民たちが戦うことになるという。


 そのため、個人単位での戦力差が大きいのだ。個人単位の戦力差とは、実は人数倍以上の差がある。


 例えば10万人同士で戦い、個人に1の戦力差がある場合、計算上では戦闘力の差は10万になるが、実際には20万~30万は開く。これは、生半可な作戦じゃあどうにもならない数字だし、ウーノでもひっくり返すのに苦労するだろう。


 それが今目の前で起きようとしている。士気の高低は、思ったよりも戦争に響くのだ。そこで、同じ分隊の仲間に、


「ここだけの話だが、俺は魔法が使える。何かあっても守ってやろう。」


 と囁く。彼らは懐疑的な目を向けてきたが、俺が指先に電気で火花を散らすと、慌ててうなずいた。

 もちろんながら、魔法は万能じゃないので、そんな保証はないのだが、農民たちには安心材料が欲しかったのだろう。


 幸いにもこの文体の位置は、交戦が遅くなるはずだった。ましてや、運が良ければ、戦争が交戦よりも早く終わるかもしれない。


 だが、そんな希望を打ち砕く存在が現れた。ゼロだ。気配だけで、すぐ近くにいることを教えてきた。恐らく、奴は俺一人が目的なのだろう。ソリアに、


「少しだけ、待っててくれ。」


 と告げると、


「何よこんな時に。緊張でお手洗いにでも行きたくなった?」


 と聞いてきたので、


「大の方だ。」


 とユーモアあふれる言葉を返してやる。そんなつもりはないけど、もし俺が負けたら、これが遺言になるのかなぁ。


「何それ。早くすましてきなよ。」


 先ほどの告白のことは感じさせない、それでいて、戦う覚悟を持った目だった。


「もしかしたら長引くかも。待ちきれなかったら先に行っていいよ。」


 これで遺言更新だ。


「いいから早くいけって。」


 声を聞くに、もう大丈夫そうだ。俺はひらひら手を振ると、まずは用意してある食料に向かう。今更だが、俺の体重は太り期と痩せ期がある。旅立ったのは、痩せ期から太り期へと移行するとき。初めてソリアと会ったのは太り期のはずだが、異世界は元の世界ほどおいしく、大量の食料がないのだ。


 しかし、食料の件はソリアに止めてもらった城で調整する。そこから再び太り期、その後また痩せ期に入っていた。


 俺の身体能力が最も上がるのは、痩せ期から太り期に入るとき。ここが、一番自分が動ける時だ。ドウエには遠く及ばないまでも、姉のセッテと同じぐらいは動ける。


 目の前にある戦場食は、はっきり言ってまずかったが、栄養としては十分だ。穀類を強引に固めたシリアルのようなものと、干し肉を湯で溶かしてスープにするもの。スープにする時間も水も余裕がなかったので、ぱさぱさの肉を口に押し込み、ろくに噛まずに飲み込む。


 少し食べていると、力が湧いてきて、さらに加速する。おなか一杯では動けないので、腹八分目で止めたときには、自覚できるほど体重が増え、力も増していた。


 最後に、こけおどし、ほどにもならないような剣を手に持ち、ゼロの気配のする方へと走った。


 最初にソリアと、ヨルさんと野宿したところまで来る。敵陣に近く、それなのにここにはゼロしかいないと勘でわかる。


 おそらく、ゼロが何らかの用事のために人払いしたのだろう。


「予想通りの位置と時間だ。」


 すぐに真後ろから声が聞こえ、慌てて剣を振り抜くが、誰もいない。もとの方に向き直ると、10メートルぐらい離れた位置にゼロが立っていた。


「きさまぁ!」


 怒りで沸騰しているはずの頭なのになぜか思考はクリアで、抜銃をしながら、引き金を引く少し直前に魔法を使う。少しでもしびれれば、心臓と脳を打ち抜けるよう、二発連続で熱戦銃を撃ち、すべて交わされたときの予備として、ワンテンポ遅れて足にも魔法を打つ。


 飾り程度の剣を構え、奴の死角になる位置から本命のディバイダーを投げつける。


 だが、すべて予想されていたらしい。先に上半身をそらして魔法をあえてくらい、動いたら当たるようになっている三発目をかわす。俺が手に持つ剣をチョキで挟み、受け流すように捌きながら、ディバイダーの持ち手を空中でつかみ、奪い取る。


「これは返してやろう。」


 きちんとディバイダーの持ち手側を向けて返してきたのには腹が立ったので、そのまま切り上げてやると、その刃と、速度と向きを合わせて飛びやがった。


 着地地点は変えられないはずだから、そこに銃を撃ち、上から小さなサイズの雷で挟み撃ちにする。


 すると今度は、空中ですぐ近くにあった木に指を突き刺し、そこを支点にぐるりと回る。回っている指を狙うと、靴が飛んできた。よく見ると靴からカッターが飛び出ており、わかりやすく紫色に光っている。


 先ほどディバイダーでやられたのと同じように、カッターではなく靴の布の部分を掴み、


「返すぜ」


 と投げ返す。すると今度は、


「どうも」


 と見事に履きやがった。


 しかし、どうしてこんなに体が動くんだ?


 今の攻防は、時間にして10秒にもならない。


「しかし、この複合薬を使って同格未満では、とても勝てんぞ。」


 と、ゼロが注射器を見せびらかしてきた。恐らく、神経系に作用する薬を最初に打たれたのだろう。


「安心しろ。致死量ではない。

撃った直後から2時間まで効果は持続し、身体能力を300%上昇させる。それから先は嘔吐と筋肉痛がひどくなるだけだ。」


 ふと俺は、ある事に気が付く。だが、ゼロに気取られないため、そのまま強気で返す。


「それなら、お前は使わなくていいのか。」


「今回の任務は、お前の足止めだ。」


 なるほど、逃げても捕まえられるし、打たなくてもできるぞ、ということか。なめられたもんだな。真後ろのソリアにも気が付いていないくせに。俺の異変に気が付いて、追ってきてくれたのだろう。


「随分となめられたな。ところで、後ろ、気にしなくていいのか?」


 普通、人はこういえば振り向くだろうが、こいつは最初から人を疑うだろうし、俺がこうやって同時にとびかかれば、今のがブラフだと信じて後ろを向くことはない。


「済まない。詐欺師の遺伝子なら何人分も入っていてね。」


 よくわからないことを言うと、後ろから突こうとしていたソリアをロケットの打ち上げのような力で蹴り上げ、落とした大剣が俺の頭に刺さるようにした。


 慌てて回避し、気を失って落ちてきたソリアを、足腰の関節をフル稼働させて受け止める。


「時間だ。帰っていいぞ。」


「ふざけるなっ、きちんと勝負しろ!」


「それ以上突っかかっていると、オットのところにたどり着く前にその女は死ぬぞ。」


 言っていることが本当かどうかわからない以上、本当として動くしかない。


「くそっ。」


 どうやら、攻撃をしては来ない雰囲気だったので、薬物の力も使いソリアを背負うと、自陣の中心に走ることにした。振り返る余裕はないし、振り返っても誰もいないだろう。


 後ろから、せき込むような声が聞こえ、生暖かい感覚が広がる。


 無限にも思える時間走り、ようやく本陣が見えてきた。今は、仲間たちに顔を合わせずらいなどと言っている場合ではないので、ケガ人たちが集まりつつあるところにノンストップで飛び込む。



 魔法が使えることは言った方が治療を先回しにしてもらえるかもしれない。


 自分勝手な考えではあるが、ここは戦場。全員を助けることはオットでもできない。


 ならば、自分の仲間だけでも。たとえ答えられなくても、自分のことを想ってくれている人だけでも助けたいというのは、人として身勝手だろうか。


「こいつは魔法が使える!助けてやってく……れ……あ。」


「は、はいっ治療室は、こち……ら……あ。」


 黒髪ポニーテールに白衣を着た珍妙な姿の案内人は、ティンケだった。

ここまで読んでいただきありがとうございます!

いかがでしたでしょうか!

今回はセーイ対ゼロ、魔法の力があってもゼロのが強かったですね……

もしかしたら、天候が雨でなかったのもあるかもしれないです。

ちなみに、こんな時ヨルお兄様は何をしていたのかというと、テント付近で足止めを食らっていました。

彼は、奇襲の後すぐに戦う準備は整えたのですが、妹にセーイと同じことを言われ、赤くなって行かせてしまったのです。

以上、本編にかけなかった裏側でした!

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