23、ゼロ、焦燥
こんにちは!
さいきん、一話の長さが短くなってきている怪物mercuryです……。
次回は、長くなるはずです。
あと、僕自身の体調管理もしっかりしたいです。
この作品も、間もなくゴールでございます。
どうぞ、よろしくお願いします!
なぜだ。なぜできない!
この世界において、魔法を使えるのは貴族と王家だけ、ということになっている。しかし、本当の意味ではそうではない。
偶然にもたどり着いたこの国、オーディンには、魔法に関する古い書物が数多く眠っていた。遺伝子レベルで刻まれた脳をなるだけ早く使い、すべての書物を読んだ。
この世界における様々な仕組みを理解するとともに、未来予知が一部だけできるようになった。あと五日で、団の奴らは到着する。その対策のために、多くを知る必要があった。
脳に書き込まれた人格のおかげで、王子をうまく丸め込み、王家の秘伝の書物も見せさせた。
オーディン以外の、三つの国も含め、この国にはおかしなところがあった。こっそりと取った平民、貴族、王族のそれぞれの遺伝子に、根本的な違いはなかった。
つまり、体の構造には全くの違いがないのに、魔法を使えるか否か、という大きすぎる違いがあるのだ。
はじめは、個人差で強い弱いがあり、そのせいで平民は使えないものと勘違いしているだけ、齢が無意識に使っているのだと考えていた。しかし、王家の秘伝の所のおかげで、謎が解けた。
結論から言うと、この世界の住人はみな魔法を使える。そしてそれは、体の構造が変わらない、この世界から見た異世界人である人間も同じである。
遠い昔、まだ元の世界の旧石器時代に近いころは、普通に皆が魔法を使っていた。しかし、どこの世界でも人間とは等しく愚かだ。
この世界の住人も、戦争をしたらしい。しかも、なまじ魔法が使えるがために激しく。
だんだんとここでも軍隊が編成されて行き、より明確なイメージの元、強い魔法が使えるものが重宝されるようになる。
強いものが重宝されるのは軍隊での基本だから、本来ならそれでよかったのだろう。
しかし、これが進むにつれて、歴史に暗雲が立ち込める。
魔法が弱い者が、次第に強いものの盾として扱われるようになり、そういう者たちには魔法よりも剣と槍の訓練を施されるようになる。
そして、だんだんと魔法を使わないものが下の階級に残されていった。
それだけなら、生活に応用するだけの魔法ぐらいは残っただろう。しかし、今ではそれもほとんど残っていない。
このオーディンが、敵国を弱体化させ、攻めやすくするために噂を放ったのだ。
「本当は、魔法は命を削るものだ」
と。これを信じた敵国民は魔法を使うのを厭うようになり、オーディンは快進撃を続けた。このうわさが、自国にも広がるまで。
最初に気が付いたのは、とある文体の分隊長だったという。
「私の隊員に、どんなに頑張っても魔法が使えないものがいる。」
その報告はあちこちから上がる。
なぜか?答えは、難しくない。自らの愛する子が魔法なんぞで命を落とさないよう、「優しい」その兵の親が、
「あなたは魔法は使えない」
と言って育てたのだ。
おそらく、親としては当然のことであろう。そして、平民の間でそのように教育するのが流行るようになる。貴族は、平民たちが反乱を起こす心配がないので放置する。
こうして、平民=魔法が使えない、という常識が成り立ってしまったのだ。
これが書いてある歴史書を見たときに、この世界の住人でなくても魔法を使えることは確信した。自分でも使える、と。
彼らが到着するころには、使えるようになっていないとまずい。
ウーノの性格からして、核兵器は使ってこないだろうが、戦闘機くらいなら余裕で出してくるだろう。ワルキューレも明日には帰ってくるが、ドウエとトレを同時に相手にさせるのは荷が重そうだ。
オットのあの技は、見るからに体への負担が大きい。おそらく、今は付き合っているであろうノヴェが使わせないはずだ。
だが、追い詰められたら使ってくるだろう。そして、あれはドウエと互角の自分でも勝てない。やるなら、火属性の魔法で焼き払いたいが、あの体を焼き払えるのは王族クラスだけだろう。
それらを自分が予知していることは、もうウーノにも予知されているはずだ。それを自分も予知しているのだから、互角ではあるが。
それでは、せめてワルキューレは使えない(と本人は言い張る)魔法を使えるようにしておくべきである。
こちらは向こうより手持ちの情報が多いのだ。ならば、こちらが先に手を打つようにしよう。
そして、練習を始めてしばらくし、今に至る。
結局、「奴ら」に言われたウイルスと通信機器を取り付けたラプラスも行方不明、腹が立ち、思い通りにいかないことばかりだ。
自分は、困難に当たったことがない。遺伝子を調整され、万能に作られたのだから。「奴ら」が世界中の墓や遺産を荒らし、手に入れてきた過去の偉人の遺伝子をベースに作られた、無敵の存在であるはずなのだ。
アインシュタインの頭脳、アーサー王の武力、シモヘイヘの狙撃、ブルータスの暗殺、エジソンの発明力etc……。
それを、15歳まで血を吐くような訓練を続けさせられ、その後は世間の常識を記憶させるために高校に入れられた。
だが、魔法使いの遺伝子はなかったのか、それとも、魔法自体を信じられていないか、あとは……。
自分の中に書き込まれた、ナイチンゲールとガンディーの遺伝子から作られた人格が、邪魔しているのかもしれない。
忌々しいことだが、ほんとうに忌々しいのはそもそも自分を作った「奴ら」だ。奴らの命令には逆らえないよう、なにかしらの遺伝子を組み込まれているらしいが、こればかりは今のままではどうしようもない。
とりあえずするべきことは、団を全員消し、ラプラスも消して、逃げることだ。
「人格」が何を企んでいるかは知らないが、トレのような二重人格とも少し違う。あいつらを殺すため、魔法が使えないならほかの方法を考えるとしようか。
時間は、もう残り少ないのだから。
ここまで読んでいただきありがとうございます!
いかがでしたでしょうか!
ここでは、本編で軽くしか触れていないゼロの秘密でも書こう!と思っていたのですが、それは次回の、作間の「キャラ紹介」で詳細を作ろうと思います!
ここまで読んでくださったあなたに感謝を持って、もう少しだけ、お付き合いくださいませ!




